05 裏切られた日
「リーゼロッテ!君との婚約は破棄させてもらう!そして私はこのアリス嬢と婚約するっ」
「···っんで、何でですかゼン様!」
「それを君が問うのか!君にはわかっているはずだ!」
そして私の意識は再び暗闇へ引きずられていった。
「ん~あ~」
(今の夢は···?)
「あら。お目覚めになられたのですね。お嬢様。」
メイド服を着たおねぇさんが私が寝ているベッドを覗き込んだ。
「う~」
私は偉いからちゃんと返事をする。もちろん笑顔で。
「ブブッ、はっ鼻血でそう···」
(オイオイ)
「さぁ、それでは着替えをしますよ」
(それにしてもさっきの夢は···?ただの夢?めんどいから正夢にならないといいな。
てかまず、冒険者になりたい。)
でもまだ生まれたばかりの赤ん坊がなれるわけがない。
(あぁ、はやく大人になりたい)
そういえばあの剣はどうなったんだろうか?
いや、今はいい。赤ん坊からいきなり火がでたら怖いだろ。
あんな目で見られるのはもう嫌だ。
けど、いつかは知られる。
そのいつかはいつ来るのか分からない。
でも今はまだ待って欲しい。
家族の愛を。
あの美しい目を見ていたい。
できることなら永遠に。
···でもそれは叶わない。
いつかきっと、私を恐れ、恐怖する。
前世でそうなったように。
忘れてはいけない。化物は、どこへ行っても化物だ。
傷つきたくないのならかかわるな。
···けど会ったばかりの人にこんなことを思うのは。
この世界では違うと。
受け入れてくれると。
希望を抱いてしまったからなのかな。
また繰り返すの?
前世で、家族を、友人を、信じてしまった結果があれじゃないか。
もう希望を抱かないと。
もう誰も信じないと。
そう誓ったはずなのに。
それでも希望を抱かずにはいられないのは。
なぜだろう。
父よ、母よ。
私の本当の姿をみても。
『愛している』と。
『天使』だと。
言ってくれますか?
私を信じてくれますか?
『この化物!お前は私たちの子供じゃない!』
前世の母よ。
『来るなっ化物!』
前世の父よ。
『気持ち悪い。こっちに来ないでっ』
前世の友よ。
あぁ、前世で私が信じた者たちよ。
信じていたのに。
裏切られた。
私はあの時。
あの姿を見せるとき。
何を信じるべきだった?
あぁぁぁぁぁぁ、あの世界は美しかった。
だが、姿を見せた、あの時から。
私の中の歯車は狂っていった。
色鮮やかだったあの世界は。
一瞬にして、黒と白の灰色の世界に変った。
この世界は。
どうだろう。
私はまた選択を間違えるのだろうか。
あぁ、どうかこの世界は。
私にとって美しいものでありますように。
光を失うことがありませんように。