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Yonge & Finch  作者: 森羅万象
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雨雲

第一章 雨雲


今日で二ヶ月だ。毎日起きてわ壁の向こうに第二の壁として役目をまっとうする立派な丘のてっぺんの様子を伺う。この習慣を実行する者はもう周りにはいない。習慣と言うよりは風習といったほうが適切だろう。戦争地へと向かう兵士の帰りを待つのなら、この風習もより長く継続されてた頃だろう。空にはまるで自分の存在から逃がれようと、必死に雨雲が遠ざかっていく。雨が嫌いな自分でさえ、少しばかりと雲に対する嫌悪感を覚えた。追い風が自分を避けて丘の上へと急ぐ。これほど早朝に外へと顔を出した自分がばかばかしく思えて、ゆっくりと重い足を壊れかけた木のドアへと運ぶ。


朝だというのにろうそくに火をともしながら朝飯を囲む家族の様子は相変わらず暗い。今日は特別に強い風が木のドアをいじめる。ガタガタと悲鳴をあげるも容赦なく攻撃を休まない風、この対決には見飽きた。これに家族は目向きもしないことが理由だろう、冷めたスープを運ぶスプーンを不器用に、こぼしながら口に入れる。この目の前に座りながらもそびえ立つのが父、いや、自分の気分次第で父になったりならなかったり、いろいろと複雑だ、自分という存在は。自分から右に居るのが母だ、相変わらず口数が少ない。それがあってか、父も自分も喋る気分になかなかなれない。てんじょうに先月空いた小さな穴から空の様子を伺う。真っ黒な雲のせいか、家にポツンと落ちてくる雨は肉眼では見えない。


決まったようにドアの方向に顔を向けるとノックの音が家中に響きわたる。父が不機嫌そうに息を吐くと、自分がドアに向かう徒歩の速度を二倍上げた。開いたドアの先にいる少年の姿はところどころにあいているドアの穴を通して確認済みだ。ドアが開いた先に居る少年は満面の笑顔で自分の顔色を確かめる。

「おい、頼むぜキール」呆れた顔で少年は話しかけてきた。少年と呼ぶが自分と同い年だ。少年と呼ぶのは、周りから呼ばれるのは、彼がいつまでたっても「冒険しようぜ」、「競争しようぜ」、「遊ぼうぜ」と自分に隙間さえあれば強要してくるからだ。面倒くさいが、一応暗い雰囲気をまとう我が家から脱出するためには十分な救い手だ。行ってきますと言う時間もくれず、自分の手を強く引っ張り、外へと誘導される。


雨が心配だったが、あまりにも小雨すぎて逆に情けなかった。自分に背を向けて行進ごとく勢いのある歩き方で進む少年。二人の差を埋めるべく早歩きで進むがあいにく早朝の追い風とは比べ物にならない向かい風が自分の顔を強打する。差に気がついた少年は自分を奮い立つ為に言っているのか、心に響く悪口を連呼する。

「どうしたキール?お前の父ちゃんと兄ちゃんは風ごときに殺されたんじゃないぞ!」

すでに貧相な家が並ぶ市街地を抜け、ほかの家とは違って広い敷地の確保を証明する壁が横に伸びる。自分を壁の上に届かそうと少年がしゃがむ。勢いをつけ少年の背中を土台としてとんだ自分は壁の上を右手で包み込み、全体重を上へとあげる。やっと顔が中の状況を確かめる頃には、少年も真横で同じ体勢をとっていた。

「また減ったなぁ」と覇気のない声の向こうには十人程の兵士が鎧をまとい、寂れた剣を互いに向けて振り回していた。きずいたら、真上に忍び込んだ雨雲が泣いた。


読んで下さりありがとうございます。連載を続ける上で本当に心から感謝しています。つまらなかったら、今度もうちょっと努力するので今のところは是非自分を生かしておいてください。

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