俺と後輩 帰郷(練習作)
はじめまして、目にしていただいてありがとうございます。
読み専ですが、ふと刺激されて書いた始めての作品です。
練習用にふと思い付いたまま書きましたので結構な駄作というか小学生の作文レベルの文章であります。
お目汚しですが、暇つぶしにでもなればと思います。
高校を卒業してから8年働いていた工場が潰れ、なんかどーでもよくなってしまった。
最初の数年はクソ親父が作った借金を返すために死に物狂いで働いた。
その次の年は母さんが梗塞で倒れ、その治療費のために働いた。
母さんが死んだあとは恋人との結婚資金のために……。
しかし、無職になった俺に残されてたのは元結婚資金だけで、ほんとにどーでもよくなってきた。
失くした職と一緒に今までの自分を捨てるために車も売って、アパートも引き払って旅に出ることにした。
電車旅ってのもいいもんだよ。
行くあてもない旅だったが、ふと楽しかった中学時代を思い出し学校へいってみようと思ったのは、果たして運命ってヤツだったのか偶然だったのか。
アイツと再会した後は運命だったらいいな、とひそかに思ったんだよな。
いい大人が中学校を見つめているというのは気恥ずかしいもので周りの視線がどうも気になる。
そこのオバサン、オレはロリコンでも不審者でもねぇよ!。
微妙な視線とヒソヒソ話に耐えられずオレは逃げてしまった。
ああ、教室見たかったなぁ。
駅前で昔行きつけだったカレー屋で腹を満たす、相変わらず美味くて安いが親父さんが病気で亡くなったと聞いたとき、不覚にも涙が出た。
そういや、涙なんていつ以来だろうか。
しんみりとした気分でぼんやり歩いていると、いつのまにか風俗街に足を踏み入れていた。
ぐぬぬ、やっぱオレってエロいのか、いやいやいい大人が彼女と別れてから禁欲生活してたんだ仕方ないよな。
と自分を慰めつつ、客引きとの掛け合いを楽しむ。
幾人かの客引きをかわした後、ふと目についた看板『ももたろう』、そこに出勤してきたと思われる美人なお姉ちゃんに目を引かれつい店に入ってしまった。
男なら仕方ないよな。
昼間割引で指名は無し、なんとなく運試しのような、度胸試しのような気分で待つ。
そういや、風俗店なんて入社の歓迎会のときに工場長に連れられて以来だな。
さっき見かけた子か胸の大きい子を指名しとけばよかったか、どんな子かな、デブやオバサンはきっついな。
いろいろと想像しながらインスタントコーヒーを飲みつつ待つ。
二~三十分ほど待っただろうか、もしかしたら気のせいで数分かもしれないが微妙に緊張していたため呼ばれたとき、声が裏返ってしまった。
案内されてきたのは、どピンクの部屋、ベッドと風呂だけの小さな部屋だ。
ふと目をやると薄着のお姉ちゃんが目に入る。
小柄でやせっぽち、顔はまあまあだが化粧が濃いのでごまかされてるかも、年下ぽいがロリってわけでもなく『普通』って言葉がよく似合いそうな子だった。
ガチガチに緊張したオレから唯一の荷物だったバックパックを受け取り脇へ置くと、銀杏の葉が床に落ちた。
「銀杏の葉、この辺には無いけど旅行ですか」
少しかすれた柔らかな声、ふと記憶のどこかに引っかかりを覚える。
「ああ、母校を見にいってきたんだけどさ。恥ずかしくって逃げてきた」
すんなりと言葉が出た、そこからは大暴走だった、若いって恥ずかしいな。
いつからかずっと我慢してきた、大人で無ければならないって、弱味を見せてはいけないって。
でも、誰かと話したかった、人寂しかった、だけど大人のフリをしていたんだオレは。
金で買った女だから、ゆきずりだから、何故か安心感を感じたから、オレはついつい時間の許す限り彼女と話をした。
彼女の話はよくある三文小説の内容と同じ、家族のために風俗で働いているとか、オレはそんなにちチョロそう見えたのだろうか。
「あっ、ごめんなさい、時間ないからすぐに準備しますね」
彼女が服を脱ぐ、痩せた体で色っぽさを感じずに見ていて逆に胸が痛んだ。
「いや、すまん。どうも起ちそうにないし、もうちょい話そうよ」
ああ、恥ずかしいオレはEDかっ。
でもまあ、彼女と話しているうちにどうにもそういう欲求は消えてしまっていた。
時間が来て見送ってくれる彼女がそっとキスをしてきた。
まあこれもサービスの一環でみんなにしてるんだろうが、どこか気分がよかった。
男ってやつは単純だよな。
手元にある封筒の中には100万、クソ親父が送ってきた金がある。
たぶん気まぐれ、いやきっと、その金を持って居たくなかったんだろうな。
彼女にポンっと渡す。
「チップだ、取っといて」
一度は言ってみたかったセリフの1つ、オレカッコイイって気分になれる。
「えっ」
彼女の反応も待たずに店を出る、さてクソ親父の顔を見にいくか。
そう、それで終わり、きっとドラマのようにはならないと思っていた。
都合のいい幻想は物語の中で、現実は冷たい。
彼女は馬鹿な客から騙し取った金で遊び、オレは過去のわだかまりを捨てた。
今夜はクソ親父と喧嘩して、酒を飲み、母さんの話でもしよう。
しばらく立ってオレは親父のコネで工務店で働くことになった。
情けないことだが働かざるもの食うべからずだ、あの100万惜しかったかなと後悔するも後の祭りだ。
仕事帰りに母校を眺めて銀杏通りを散歩するのが日課になった。
最初は通報されかけたが、今では近所のオバチャンとは見知った仲だ。
まあ、オレがそこにいく時間にはもう生徒はいないしな。
今日もビール片手に枯れた銀杏通りを歩いていた。
「先輩…ですよね」
急に声を掛けられた、びっくりしてよく見ると風俗の女だ。
金はやったが、先輩と言われる理由は思い当たらない。
というか騙した男にわざわざ声掛けるなんて、またカモる気なのかコイツ。
「誰?」
知らないフリをしてみる。
「先日はすいません。言えなかったんだけど中学のとき美術部の後輩だった・・・」
人間本当に驚くと目の前が真っ白になって何も聞こえなくなるもんなんだな。
ふと思い出した、2つ下の地味な子、オレの下手な絵が好きだって言ってくれた子がいた。
なぜ見て気がつかなかったんだろうか、あのころ舞い上がってしまって自分勝手に引きずりまわして一緒に遊んだ後輩を、オレの最初の彼女を。
その瞬間すごいショックを受けた、だってそうだろう。
初めての彼女が風俗で働いていて、しかも男を騙していたなんて。
「な…んで」
声がかすれ裏返る。
「先輩は変わってないですね、あれから探しまわったんですよ。あそこも辞めて」
ドキドキと動悸が止まらない、頭がクラクラして眩暈がする。
現実を受け入れられないオレに彼女は追い討ちを掛ける。
「お金助かりました、必ずお返ししますから今度は逃げないでくださいね」
さてさてオレが彼女と再会したのは偶然だったのか、運命だったのか。
こうしてどーでもよかったオレの生活は彼女によって引っ掻き回されることになる。
中学時代とは逆になっちまったが、因果応報ってやつだろうか。
文才ないなと実感しますね。
書きたい作品を書けるようになるまでどんだけかかるのでしょうか。