和解
焚き火が辺りを橙色に染め、その周りに狸穴の狸、それに狸御殿からやってきた狸たちが輪になって囲んでいる。みな押し黙り、どうにも居心地が悪そうだ。
時太郎は空を見上げた。
夜空には一面の星が広がり、双つの月が水平線ぎりぎりに浮かんでいる。
ざああ、ざああと波の音が単調に聞こえ、つい思いは、まだ見ぬ母親のことに移った。
これで翔一を連れ、京の都へ向かうことができそうだ……。
ふっと砂浜を見ると、波打ち際に刑部狸とおみつ御前の大きな身体が焚き火の明かりに照らされ、浮かんでいた。二匹は顔を突き合わせ、何事が相談しているようだ。その後ろに、神妙な顔つきで芝右衛門と五郎狸が控えている。
やがて話し合いが終わったのか、芝右衛門と五郎狸は肩を並べて時太郎の側へやってきた。芝右衛門は満面の笑みを浮かべている。
「まったく威而鋼の効き目は覿面で御座るな! お二方、まるで若狸のように張り切って交合なさって……。これで狸御殿と狸穴は再び、一つになれまする」
五郎狸も同意した。
「左様、左様。お二方はもともと若い頃、好き合うておったのじゃが、喧嘩別れをしてしまい、それが狸御殿と狸穴二つに別れる原因じゃったのじゃ。それがあれが切っ掛けで、このたび夫婦となられることになって、まことに目出度い!」