百五十本
ひいいい──
甲高い悲鳴が空から降ってきた。
なんだと見上げると、ぽつんと小さな黒い塊が落下してくるところだった。塊には手足が生えている。
思わず時太郎は両手を捧げて、それを受け止めていた。
豆狸だった。
全身の毛がちりちりに焼け焦げ、火薬と毛の焦げる匂いが漂っている。
「ぷう……」
豆狸が溜息をつくと、口からぽあっ、と白い煙が吐き出される。
お花は覗き込み、呟いた。
「よかった、生きてる……」
時太郎は耳を近づけた。
豆狸は、時太郎の手の平で小声でなにか唄っている。
♪震天雷がよ~
♪震天雷がよ~
♪震天雷が百五十本……
♪畜生、狸穴なんか、ぶっ飛ばせェ!
「歌なんか唄って、呑気な奴だ」
時太郎とお花は顔を見合わせ笑った。
「お前ら……許さないからねっ!」
そちらに顔を向けると、おみつ御前が怒りに震え立っていた。
「よくも、あたしの震天雷を……もう、我慢できないよっ!」
おみつ御前は吠え立てた。
「なにを許さないんだ?」
そのおみつ御前の背後から、野太い声が聞こえてくる。
おみつ御前は、ぎくりとなって振り返った。
そこに立っていたのは刑部狸だった。