表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
42/50

黒煙

「ひいいい~~っ!」


 おみつ御前は喚くと、さっと千代吉に近づき、片手でひっ攫うと、脇目もくれず、脛を飛ばして走り出す。

 時太郎も、お花と五郎狸に向かって叫んだ。

「何してるっ! 逃げるぞ!」


 お花と五郎狸は、びくっと我に帰った。三名は、武器を構えたままの狸の群れに突進する。

 狸たちは「はっ」とばかりに身構えたが、時太郎たちはそれらに目も呉れず、足音を立て駆け抜けてしまう。狸たちは、呆然と三人を見送っていた。この狸たちは震天雷の威力を目にしていない。

 そうと気付いた時太郎は振り向き、叫んだ。


「お前たちも逃げろっ!」


 狸たちは只事でないことを悟ったのか、慌てて時太郎たちの後を追って走り出した。すでにおみつ御前は息子の千代吉を脇に抱え、一心不乱に遠ざかっていく。


 奇妙な追いかけっこが始まった。


 先頭はおみつ御前、その後を時太郎たち三名、殿軍しんがりに、武器を構えた狸たち。

 走りながら、お花は時太郎に話しかけた。

「豆狸、どうなっちゃうのかしら? あいつ、あそこから逃げ出せたかしら?」

 時太郎は短く首を横に振った。

「知らねえっ! とにかく、おれたちが危ないんだ……!」


 時太郎が言いかけたその時、不意に背後から空気の塊といった感じの熱風が背中を打った。


「わっ!」とばかりに倒れこむ。


 ついで「どお~んっ!」という爆発音が鼓膜を打つ。同時に、ずし~ん、と腹に響く震動。

 地面に倒れこんだ時太郎は、振り返った。


 見ると、土蔵のあった場所から、真っ赤な夕空に向かって、もくもくと黒煙が立ち上っている。


「豆狸ちゃん……。可哀相……」

 お花は涙ぐんでいる。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ