豆狸の活躍
おみつ御前の命令に、今まで武器を構えて控えていた狸たちが一斉に動き出した。
はっ、と時太郎は身構える。全身の筋肉が戦いに備え、張り詰めた。
「動くなっ! これが見えないのかっ!」
その時、甲高い声があたりを圧し、思わず全員が動きを止めた。
全員が声の方向を見上げる。
「わっ!」とばかりに、おみつ御前が立ちすくんだ。
なんと荷物の天辺に豆狸がすっくと立ち上がり、その左手に握っているのは一本の震天雷! しかも、右手には燐寸が!
「お、お、お、お前……何をする気だい!」
おみつ御前が喚く。
「こうするのさ」
豆狸はしゅっと音を立て、燐寸の先を荷物の表面に擦り付けた。ぱちっと火花が散って、燐寸の頭が燃え上がる。ぼうっ、と燃え上がる焔の先を、ゆっくりと震天雷から伸びている紐に近づけた。
「や、や、や、やめろっ! 馬鹿な真似はおよしっ!」
おみつ御前は悲鳴を上げた。
豆狸は笑った。
「馬鹿な真似? いいや、馬鹿な真似じゃありません。こんなものは、さっさと始末するに限ります!」
豆狸は燐寸の炎を、紐に近づける。
ぱちぱちぱち……
紐が細かな火花を散らし、燃え上がった。
すかさず、火が着いた震天雷を、豆狸は先ほど南蛮人が蓋を開いたままの箱へぽいとばかりに投げ入れる。
忽ち、箱の中に並べられた震天雷の紐に火が燃え移った。