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〝声〟
闇の中、時太郎は〝声〟に耳を傾けていた。
その〝声〟は奇妙だった。
確かに聞こえているのに、聞こえていない。耳を澄ますと、ふっと遠ざかり、意識を逸らすと、また聞こえてくる。
それは、苛立たしいほど捉えどころがなかった。何かを単調に呟き、延々と報告を続けているようである。
いったい何を呟いているのだろう?
どうやら〝声〟は、一つではなさそうである。幾つかの〝声〟が交錯し、それらが一つの〝声〟に収斂していく。
じっと聞いているうちに時太郎は、それらの〝声〟の内容が判ったと思った。
いや、その時は確かに、そう思えたのだ。
驚愕が時太郎を揺り動かす。
しかし、その感情は一瞬にして失望に変わった。もう、どこからも、その〝声〟は聞こえない。
時太郎は再び闇にとり残されていた。