第七十話 ボクしか知らない、新たな決意④
辺境伯たちと別れたあと、エリオットとガーネットはエレナに連れられ、妹のセシルが眠っている客室へ向かった。
「セシルが起きましたら、外にいる使用人にお声かけください」
辺境伯の娘、エレナがそう伝えると、部屋を出て行った。
「はあ……なんか、落ち着かないな……」
華やかな装飾品ばかりの客室にエリオットは身分不相応な気分になる。
まさか、王国の市民権も持たない自分が、こんなところにいるなんて――
あまつさえ、領主様である辺境伯と会話することになるとは――
数日前の自分では考えもしなかったことだ。
その数日間、エリオットの身の回りは大きく変わった。
冒険者パーティの掘削士として、不遇な立場で働いていたエリオット――仲間であるグエルにイフリートのいる火口へ落とされ、絶体絶命な状態に陥った。
だが、それから彼の大逆転が始まる。
とっさの判断で火口の底を崩落させ、イフリートから逃れようとした彼は、そこで未知のダンジョンを見つける。そして、古代人が製造した機械人形のガーネットと出会う。
ガーネットはエリオットと一緒に落ちてきたイフリートをいとも簡単に倒してしまうほどの、戦闘力を持っていた。
エリオットはガーネットのチカラを借りて、新たに見つけたダンジョンから掘り出した、鉱石や魔道具を持ち出し帰還。
鉱石や魔道具を売ることで、エリオットは大金を手にする。
仲間だったグエルたちにそのカネを狙われるのだが、ガーネットや魔道具のおかげで彼らを撃退。
手にしたおカネで、世話になっているマリーさんのパン屋を助けた。
すると、アウグストの街で一番大きい商業ギルドの支配人であるマドロウに目をつけられ、いろいろとイヤガラセを受ける。
そのたびにガーネットたちが活躍し、マリーさんのパン屋を守ってきた。しかし、窮地に追い込まれたマドロウは、妹のセシルを誘拐するという暴挙に出る。
それでも『マナ使い』として覚醒したエリオットによって、マドロウや協力したグエルたちを退けるのだった。
そして、エリオットは領主であるアウグスト辺境伯と話をする機会を得たのである――
「お兄ちゃん――?」
いろいろと考え事をしていたとき、そんな声が聞こえた。
「セシル? 目が覚めた? どう? どこか痛いところはない?」
「ううん、私は大丈夫。お兄ちゃんは?」
「ボクも大丈夫だよ」
「そう……よかった」
まだ、眠気眼の妹を見て、エリオットはまだ迷っていた。
「お兄ちゃん? 何?」
「えっ?」
「そういう顔をしているお兄ちゃんは、何か言いたいんだよね?」
そう言われて、エリオットは決心する。
「そのう、ゴメン!」
「――えっ?」
いきなり頭を下げる兄に、セシルは呆然とする。
「どうしたの?」
「ボクが冒険者なんてやっているから、セシルに怖い思いをさせてしまった」
今回、マドロウとグエルが暴走し、セシルを誘拐したのも、エリオットがダンジョンを見つけて大金を手にしたから――
冒険者を続けることで自分がひどい目に遭うのは仕方ないと思っていた。だけど、家族にまで危険がおよぶなんて、今日まで考えもしなかったことだ。
「だから、セシルが言うとおり、冒険者を辞めるべきなんだとわかっている。それが一番なんだと……」
自分にとって、何が大事なのか――それを理解していれば当然の判断だ。
「だけど……」




