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第六十八話 ボクしか知らない、新たな決意②
そのころ、アウグストの街を離れ、ハース川を下っていた船の甲板上には男女の姿があった。
女性はマドロウ商会でマドロウの秘書をしていた人物。もう一人は、鑑定士として雇われていた男性だ。
彼女らにはそれぞれとある名前を名乗っていたが、おそらく、ふたりがその名で呼ばれることは金輪際ないはずである。
「姉さん、そのう……良かったんですか? マドロウにはずいぶんとおカネを注ぎ込んでいたはずですが……」
男性はひたいの汗を拭きながら、女性へ尋ねる。
「そうね、はっきり言って大損ね」
「だったら、もう少し彼を利用すべきだったのでは?」
「バカね。そうやって、ズルズルと引き際を遅らせるほうが愚策というモノよ。今回は、あの少年が登場した時点でリスクが読めなくなったわ」
「不確定要素はできるだけ早く切り捨てる――ということですね」
「そういうことよ」
女性はバッサリと言い切る。
「――しかし、スポンサーにはどう説明するおつもりで?」
「そうね……面倒だから、アナタが何か理由を考えておいて」
「えっ? ちょっと、それは……」
女性は、「ひと休みするわ」と言って、船室へと戻って行った。




