第六十五話 ボクしか知らない、ボクの覚醒④
エリオットはカラダを蹴られ、セシルは服を脱がされようとしていたとき、エリオットは念じた――
『た、たすけよ……万物に宿る、すべてのマナたち……奇跡を起こせ……』
その言葉に導かれたのか、グエルたちが電撃のような激しいスパークを受けて、吹っ飛ばされたのだ!
「な、何をした!?」
マドロウが地べたに仰向けになった状態で、顔だけ起こし、そう声をはりあげる。
「何をした? それはボクのセリフだよ。オマエたちこそセシルに何をした?」
エリオットは立ち上がると、マドロウへと歩み寄る。いつの間にか手足を縛っていたナワはほどけていた。
「自分たちが無能なのを他人のせいにして、無関係のセシルを巻き込んだのはオマエたちだろ?」
ふだんの少年らしいエリオットの声ではない。憎悪に満ちた声――魔族のような脳へ直接響く声だった。マドロウやグエルは「ひいっ……」と短い悲鳴をあげる。
「や、やめろ。オレが悪かった」
そうグエルが許しを請うが、エリオットは相手をにらみつける。
すると、グエルのカラダに光がまとわりつき、「ギャァァァァッ!」と叫んだ。
「やめろ? ボクがさっきそう言っても、セシルに手を出そうとしたよね? 自分がそう言えば許してもらえると思った?」
顔を近づけ、相手を脅す。
「ボクを殺すと言っていたよね? だったら、自分が殺されても文句はないよね?」
「な、何を言っている? さっきのは冗談だって」
グエルが「ハ、ハ、ハ……」とチカラなく笑う。
「そっか、冗談か……」
「あたりまえだろ?」
「グエルは冗談で人を殺せるんだ」
「――は?」
エリオットの言葉が理解できない――そういう顔をするグエル。
「ボクは、キミのようなクズでも、人を殺すのは苦痛を感じるよ。でも仕方ないんだ。セシルに手を出した報いだからね」
「こ、この……穴掘りしかできない孤児が――オレが仲間にしてやらなければ、今ごろ、野垂れ死んでいたのはテメエだ! その恩を忘れやがって! このクソ野郎!」
「そうだね。ありがとう。おかげで、ボクはキミを殺せるほど、強くなれたよ。それじゃね」
そう言って、エリオットは右手をあげる。その手がまぶしく光り出すと、その放射熱だけでグエルは痛みを感じた。
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!」
その時、ドンッと扉が開き、何人かが中に入ってきた。臙脂の軍服を着た男性たち、エリオットはその容姿に見覚えがある。
「――衛兵?」
「全員、動くな!」
中に入ってきたのは衛兵だった。剣を抜き、エリオットたちに向ける。
「どういうこと?」
動きを止めたエリオットは、そうつぶやく――
「エリオット君! もう、やめろ!」
新たな人物が中に入ると、そう声をかける。スキンヘッドのガタイのイイ男。
「ギルドマスター?」
そう、冒険者ギルドマスターのマコーミックだった。
「どうやら、間に合ったようだな」とまたひとり、中に入ってきた。貴族が纏うジャケットを着こんでいる。
「――誰?」
「辺境伯!」
マドロウがそう声にする。
「辺境伯? 領主様――なの?」
「そうだよ、エリオット君。この人がアウグスト辺境伯だ」とマコーミックも肯定する。
初めて見る領主の顔に、エリオットは混乱する。
どうして、こんなところにそんなエライ人が?
「辺境伯! 助けてください! コイツ、市民権もない孤児のクセに、吾々に暴力をふるったのです! さっさと捕まえてください!」




