第六十四話 ボクしか知らない、ボクの覚醒③
セシルが攫われたことを知り、エリオットは指示された場所へ行くと――そこにはグエル、そしてマドロウがいた。
セシルを人質にされていたので、エリオットも仕方なく言われるとおりに捕まってしまう。
「やめろ! 妹は関係ないだろ!」
「いまさら、何を言っている? この私をコケにしたんだ。オマエひとりで済むはずないだろ?」
そうマドロウは言う。
「今から、カワイイ妹が犯されていくのを特等席で見ていろ」
「おい! そんなことをしてみろ! オマエらは犯罪者になるんだぞ!」
「バカだなあ。被害者がいてこそ犯罪になるんだ。その被害者が見つからなければ、犯罪なんて存在しないんだよ」
どういう意味だ?
「ボクから鉱脈の場所を聞き出すのが目的じゃなかったのか?」
「ああ、それはもうどうでもイイ」
どうでもいい?
すると、エリオットの左腕にはめたブレスレットと、中指の指輪をマドロウは外し始めた。
反射器と無限収納リングだ。
「ウチには鑑定のスキルを持つヤツがいてな。そいつがこれをこっそり鑑定していたんだ。このアイテムはとんでもない品物らしいじゃないか?」
金貨何百――いや、何千枚にもなるような、レアアイテムだとマドロウはうれしそうにする。
「オマエのために受けた損失はこれで帳消しにする。だから、もう鉱脈はどうでもイイ」
「それじゃ……」
「ああ、これからオマエは妹が犯され、最後に殺されるところを見届けて、オマエも死ぬんだ」
そんな、卑劣なことを笑って話すマドロウに、エリオットは怒りを露わにする。
「オ、オマエは人間じゃない!」
「人間じゃない? なるほど、そうだな。私は人間を超越したモノになる。この世界の富という富を手に入れて――な」
マドロウは「ハ、ハ、ハ!」と大声で笑った。
「さあ、妹を犯してしまえ! はずかしい姿で泣き叫ぶ様子をエリオットに見せつけろ。妹は恐怖の中で悶え息絶え、そして、コイツは絶望を抱いたまま死んでいくんだ!」
狂気の表情でマドロウをそうグエルたちへ指示する。
「ク、ク、ク――ガキを抱く趣味はなかったんだが、命令じゃあ仕方ないよなぁ。ちょっとは楽しませてくれよ。セシルちゃん」
そんなことを口にしながら、グエルはセシルのアゴをクイッと引っ張って、笑う。
「エリオット、これもオマエが悪いんだよ! このオレに従わないから! 黙って、オレの言うことだけをやっていれば、妹がこんなひどい目に遭うことなんてなかったのになぁ!」
「やめろ! 鉱脈の在処でも、何でも教える! だから、妹だけは助けてほしい! 頼む!」
エリオットが悲鳴に近い声で言うのだが、マドロウは「いまさら遅いわ!」とエリオットを蹴った!
「グファッ!」と悲鳴をあげるエリオット。
「やはりな。あのヘンな技は、この魔道具だったんだな。もはや、オマエはタダのガキだ! あの時の分の痛みを味わえ!」
マドロウはそう言って、何度も蹴った。
「そうか、あの時の手品はそういうことだったのか! なら、オレもやらせろ!」
グエルもエリオットに近寄り、何度も蹴る。
「ブファ!」とエリオットは口から鮮血を吐き出した。
「おい、殺すなよ。妹が犯され悶える姿を見せてあげなければな」と、マドロウは気持ち悪い笑いをこぼす。
「それじゃあ、オレが先にこのお嬢ちゃんをいただくかな?」
マドロウの息子であるロイドがセシルの服に手をかけると、それを乱暴に破る。
「ウーッ! ウーッ!」
口を塞がれ声を出せないセシルが、カラダをくねらせて抵抗するが、それを見ていたロイドが、「なんだよ。ガキのクセに色っぽいじゃんか! ちょっと、萌えてきたぜ」と喜んだ。
「や、やめろ……」
蹴られて、カラダのいたるところが悲鳴をあげているエリオットだが、それでも、妹を助けたい一心で、手を伸ばす。それをグエルが踏んだ。
「うわぁぁぁぁっ!」と痛みを堪えきれず、叫ぶエリオット。
「イイねえ! そういう顔が見たかったんだよ!」とグエルは増々うれしそうだ。その表情は人間というより魔物だった。
(チクショー……ボクは結局、妹を守れないのか……)
悔しさ、悲しさ――そして、辛さがエリオットにのしかかる。その時だった――
『エリオット様、万物に宿るマナに語りかけてください』
そんな声が聞こえた。耳からではない。脳に直接響く声――
エリオットには、誰の声かすぐにわかった。
『――ガーネットなの?』
その声は、返事の代わりに、言葉を繰り返した。
『マナへ語りかけるのです。きっと、エリオット様をお守りしてくれます』
語りかける――マナに……
そうか……そういうことか……
『吾を助けよ……万物に宿る、すべてのマナたち……奇跡を起こせ……』
なぜか、そのような言葉が頭に浮かび、エリオットは念じた。
すると――
「うわっ!」
バチッ!
そういう音がして、セシルのカラダに抱きつこうとしたロイドが、数メートル吹っ飛んだ!
「な、なんだぁ?」
それを見ていたマドロウやグエルが、呆然としている。
だが、それもつかの間――
バチッ!
バチッ!
「ギャァァァァッ!」
ふたりとも何らかのチカラによって、壁まで吹っ飛ばされた!




