第六十三話 ボクしか知らない、ボクの覚醒②
「えっ!? セシルが行方不明!?」
ダンジョンから戻ってきたエリオットはマリーの店で、そう聞かされた。
「そうなの。昼ごろ、外に出てから帰ってこないのよ」
マリーが心配そうにそわそわしている。
「わかった。ボク、探しに行く」
「私も行きます」とガーネットも言うのだった。
「それで、どちらを最初に探しますか?」
「とりあえず、市場へ。買い出しならそっちのはず」
市場に到着すると、夕方で人だかりがスゴい。
なんとか人混みをかき分け、セシルが向かいそうな店をあたってみる。
「セシルちゃん? いや、今日は来ていないよ」
「そうですか――ありがとうございます」
いくつかの店に尋ねてみたのだが、セシルの足取りはまったくわからない。
「セシルが行きそうな店はこのくらいなんだけど――」
「仕方ありません。これからは、二手に分かれて捜索しましょう」
ガーネットの提案に、エリオットも了承する。
それからは、エリオットは街の東側、ガーネットは西側を探すことに――
「セシルーーーーっ!」
大声で、妹の名を呼ぶのだが、セシルがいる気配はまったくない。
ガーネットと別れて十分くらい経過したころ、小さい男の子が近寄ってきた。
「お兄ちゃん、これ」と、手紙みたいのものを男の子は差し出す。
「これは?」
「オンナの人が、これをお兄ちゃんへ渡すようにって」
「オンナの人?」
男の子が「あのヘンにいたんだ」と指を差す。だが、それらしい人物はもういない。
仕方なく、手紙だけをもらって、それを読んだ――
『妹を預かった。返してほしければ、ハース川の船着き場、三番倉庫まで来い。ただし、ひとりでだ。もし、誰かにこのことを話せば、妹の命はない』
そう書かれているので、エリオットは愕然とした。
「――うそ……だろ?」
手紙を握ると、「くそっ――」とつぶやき、走り出した。
指示された倉庫に到着すると、エリオットは中に入る。
「セシル!」
そう呼ぶのだが、返事はない。
慎重に奥へと入って行く。大きな倉庫は、いくつかの仕切りがあり、それぞれに大きな荷物が置かれていた。
二つ目の仕切りを通り過ぎたところで――
「エリオット、ずいぶんと遅かったじゃないか?」
そんな声が聞こえた。聞き覚えがある声だ。
顔を向けて、相手を確認する。
「グエル……」
つい先日まで、エリオットの冒険者仲間だった人物である。しかし、ヤツはエリオットの報酬もピンハネして、自分の懐に入れていたような人間だ。
それだけでない。イフリートに襲われそうになった時、エリオットを火口へ突き落して、逃げ出したのである。
そして、今度は――
「セシル!」
グエルの足元にはセシルが横たわっていた。口を塞がれ、両手、両足も縛られている。
「いったい、どういうつもりだ? グエル?」
「どういうつもり? それは、こっちのセルフだ。儲けをひとり占めしやがって」
儲けをひとり占め?
「なんのことだ?」
「とぼけんじゃねえ! さっさと鉱脈の場所を教えろ! オマエが見つけたのなら、パーティ全員のモノなんだよ!」
なんて、自分勝手な言い分だ。
「だから、もう、ボクはグエルのパーティメンバーじゃないって――」
「うるせえ! そんなにパーティを抜けたいのなら、鉱脈の在処をおしえろ!」
横暴なことばかり言ってくる相手に、エリオットはうんざりする。
「だから――」
「おっと! それ以上、近づくな! 一歩でも動いてみろ。オマエの大事な妹がキズモノになるぞ」
そう言って、グエルはセシルの顔に刃物を近づけた。
「セシルに指一本でも触れて見ろ。オマエに苦痛という苦痛を味合わせてやるからな」
エリオットはそう相手を脅すのだが、グエルは「おお、怖いね」と笑う。
「さあて、その威勢はいつまでつづくかな?」
「――!?」
後ろから誰かが近づき、エリオットの両腕をそれぞれ掴んだ。
「オマエら……もしかして、マドロウの……」
マドロウの息子、ロイドたちの特徴はガーネットから教えてもらっていた。
金髪で、派手なアクセサリーを身につけた三人組だ。
「ああ、もうバレちゃったか。しょうがないなあ」
三人の男たちはヘラヘラと笑う。
「――どうするつもりだ?」
「まずは、おとなしくしてろ。妹が大事ならな」
そう言わて、エリオットはじっとしていると、男たちはエリオットの両手、両足を縛った。
「もうイイだろ? セシルを――妹は解放しろ」
「はあ? 何を言っている? 楽しみはこれからだよ」と、グエルは笑う。
「おい、約束が違うだろ!」
「何を言っている? そんな、約束はしてないだろ?」
この声はグエルでもロイドたち三人でもなかった。年配男性の声だ。振り向くと――
「マドロウ……やっぱり、オマエが黒幕か? 妹を巻き込むなんて卑怯だろ!」
マドロウ商会の支配人、ピーター・マドロウである。
「ふん。なんとでも言うがイイ。この私をコケにした報いだ――身のほどしらずなことをしたと後悔するんだな」




