第五十三話 ボクしか知らない、勝利の方程式⑧
「なんだと! パンの売り上げが増えていない!? かえって下がっているだと!? そんなわけがあるか!」
マドロウ商会の支配人執務室で、マドロウの怒鳴り声が響いた。
「念のため再計算しましたが、やはり売り上げが下がっています。おそらく、小麦パンを安売りした影響かと――」
秘書のアイーシアはそう推測を述べる。
「バカなことを言うな! 安売りはしたが、その分、数量を増やしただろう! それで、どうして売り上げが下がる!?」
「たしかに小麦パンの販売数量は増えましたが、ライ麦パンが売れていません。それに……」
アイーシアは言いづらそうにしているので、マドロウは「それに、なんだ? さっさと言え」と急き立てる。
「実は、小麦パンも《《かなり》》売れ残ったようで、廃却処分されていました」
「な、なんだとぉ!」
せっかく作ったパンを捨てたという報告に、マドロウは激怒する。
「原価割れする価格で売ったんだぞ! それで、なぜ売れ残るんだ!?」
「すみません数値だけで理由までは報告書に記載がありません」
「もうイイ! パン屋の責任者を連れて来い! 直接聞いてやる!」
*
一方、マリーの店では――
「いやあ、エリオット君の言ったとおりだったよ。クリームパンを増やしたおかげで、売り上げが増えたわ!」
マリーは上機嫌でエリオットに伝える。
「だって、マリーさんのクリームパンはおいしいもん!」
エリオットもうれしそうにそう応えた。
「でも、どうして売り上げが減らなかったのでしょう? マドロウ商会があんなに安く販売していたのに……」
ミリアが不思議そうな顔をしている。おそらく、マリーもセシルも同じことを考えていたはずだ。
「うん、それはね――」
その時、店の扉が開く――




