第五十一話 ボクしか知らない、勝利の方程式⑥
ラピスラズリという新しい『仲間』が増えたエリオットたちは、たくさんの魔鉱石や魔道具を手に入れ、家まで戻ってきた。
するとマリシアが血相を変えてやって来る!
「エリオット! アンタ、いったい、何をしでかしたのかい!?」
お帰りのあいさつもなしに、いきなりそんなことを言われる。
「何をって――」
そう言われると、心当たりが多すぎて返答に困る。
「さっき、領主様がいらっしゃったんだよ!」
「――えっ?」
マリシアの話だと、エリオットに会いたいと訪ねてきたそうだ。
留守だと伝えると、「また、伺います」と言って帰って行ったとのこと。
「領主様が、ボクに何の用事が……」
そこまで、考えて「はっ!」と思いつく。
(もしかしたら、古代王宮の武具をボクがまだ持っていると勘づいたのかもしれない――)
それで持っている武具を全部引き渡せ。渡さないと逮捕する――そう言いにきた?
エリオットは非戦闘職の掘削士。武具を持っているのは王国の規則に反しているのだ。
「……ですが、そのようなことでわざわざ領主がお越しになりますでしょうか? そもそも、エリオット様が他に武具を持っていると知られることはないと思いますが――」
そうガーネットはごもっともなことを言うのだが――
「でも、領主様だよ。きっと、何か企んでいるんだ」
エリオットはなぜか領主のことになると、正しい判断ができなくなるらしい……
マリシアは「はあ……」とひと息つくと――
「ともかく、家へお入り。それで、そのお嬢さんは?」
そう言って、増殖したメイドを見ている。
「ジロジロと見るんじゃないよ、クソババア――」
「――えっ?」
青い髪のメイド――つまり、ラピスラズリがマリシアを罵るので、ガーネットがまた彼女の頭をたたく。
「きゃん!」
「この方はエリオット様を世話していただいているマリシア様です。謝りなさい」
ガーネットに言われて、「ごめんなさい」とラピスラズリは素直に陳謝した。
「ハ、ハ、ハ……おもしろいお嬢さんだね。やっぱり、彼女も機械人形なのかい?」
「ええ、まあ……」とエリオットは応える。
「そうかい。さあ、入りなさい」
家に入ると、セシルがさっそくラピスラズリを見つける。
「うわっ! このコ、かわいい!」
そういって、抱きつく。
「こ、こら、ベタベタするな!」とラピスラズリは言うのだが、セシルはまったく気にしない。
「アナタ、名前は?」
顔を近づけたまま、尋ねられて「ラピスラズリ……」と恥ずかしそうに名乗った。
「そうなんだ、それじゃ、ラピスちゃんね! 私はセシル! よろしくね!」
「よ、よろしく――」と、しおらしく応える青い髪のメイドだった。
(なんか、ボクやマリシアと扱いが違うのだけど――)
エリオットはそう思うのだが、妹になついてくれるのならいいかと思うのであった。
「それで、セシル。お店はどうだった?」
「そうそう、聞いてよ! マドロウ商会がひどいの!」
「――えっ?」
セシルの話では、マドロウ商会が彼らの売るパンを値下げしてきたそうだ。
それで、マリーの店の売り上げが減ってしまっているらしい。
「マドロウ商会が……」
エリオットがマドロウにケンカを売ったことで、そんなイヤガラセをしてきたんだとすぐに理解した。
(もう、ボクとマリーさんの店との関係を知ったのか……)
店の規模にモノを言わせて、安売りを仕掛けるのは卑怯なことだ。しかし、昔から使われる手でもある。
「ウチも価格を下げないとダメかも……なんて、マリーさんが言っていたよ」
売値を下げれば、当然、儲けは減る。いや、マドロウは儲け度外視で、販売しているに違いない。それに対抗して同じ価格で勝負しても先に倒れるのは規模の小さい店だ。
(だけど、それには大事な条件がある。マドロウはそれを見落としている)
「ねえ、やっぱり値下げしないといけないと思う?」
セシルが不安そうな顔を見せるので、エリオットは「いや、その必要はないと思うよ」と伝えるのだった。
「えっ? ホント?」
「うん、明日、マドロウの店に行ってみるよ。それで、はっきりわかる」




