第五十話 ボクしか知らない、勝利の方程式⑤
クリスタルから現れたのは、またもやメイド服を纏った少女だった。
彼女は目覚めると、いきなりエリオットの背後に回り、いつの間にか手にしているナイフを振り上げている!
「わっ! わっ! 待って! ボクはけっしてあやしい人物じゃないから!」
慌てて、エリオットはその少女に声をかけるのだが――
「問答無用――」
そう言って、ナイフを彼の首元に目がけて振り下ろす!
パリンッ!
乾いた金属音と同時に、彼女が手にしたナイフの刃は根元から折れた!
「なんと!?」
「だから、待ってと言ったのに――」
エリオットはヤレヤレという表情を見せる。彼は反射器という超レアな魔道具を装着しているので、攻撃がそのまま相手へ《《反射》》されてしまうのだ。
「あなどりました。次こそは――キャン!」
エリオットが待つように要求したのにも関わらず、攻撃してきた少女型の機械人形。子犬のような悲鳴をあげて頭をかかえた。
ガーネットがその機械人形の頭をたたいたからだ。
「これはお姉さま、一〇二千〇三五年ぶりです――あれ? タイマーがおかしな数字を示しています。故障でしょうか?」
「故障ではありません。なぜなら、私のタイマーも同じ値を示してします」
ガーネットがそう説明すると、一回り小柄な少女――の姿をした機械人形――は、「なるほど――」とつぶやく。
「私は十万年以上、スリープ状態でいたということですね。理解しました」
なんだろう、このシュールな会話は……
そんなことをエリオットは考えながら、ガーネットに尋ねる。
「えーと、ふたりはお知り合いなのかな?」
「はい、彼女とは王宮内で一緒に働いていました」
つまり、古代人が作った機械人形というわけだ。
「それにしては、現代語を話しているけど――」
「彼女は私の思考データを共有していますので、現代語を理解できます」
マナによる思念通信により情報交換しているそうだ。
「わかったか、この無学野郎」と、ガーネットと一緒に働いていたという少女型機械人形は言う。
(なぜだろう、ボクに対してやたら攻撃的な気がする……)とエリオットは思うのだが――
すると、またガーネットにたたかれ、「きゃん!」と声をあげる。
「痛いです。お姉さま」
「痛くありません。そもそも、私たちには痛覚がありません」
「そういえば、そうでした」
彼女たちの会話にどう反応すればイイのか悩んでしまう。そもそも、マナによる思念通信で情報共有しているなら、音声による会話に意味があるのだろうか……なんて、考えてしまう。
(彼女たちなりの、コミュニケーションの取り方……と思うことにしよう)
すると、ガーネットが――
「エリオット様は私のご主人です。これ以上、不敬な言い方をするなら、アナタを破壊します。それに、エリオット様は皇帝陛下の末裔でもあらせられるのですよ」
そういえばそうだった……
「なんと! そうだったのですか! 陛下の血筋としては貧相な少年ですが、それなら致し方ありません。不審者対象から除外します」
相変わらずトゲのある言われ方をされているのだが、まあイイか――と、気にしないことにして――
「それで、彼女の名前は?」
「ふん、聞いて驚け」
名前で驚くもなにもないと思うが――
「私の名前は『No Name』……あれ?」
「もう、以前の名前は期限切れなんですよ」とガーネットは言う。
そういえば彼女もボクが名前をつけたんだっけ――
「アナタも、エリオット様に名前をいただきなさい」そうガーネットは言うので、小柄な少女は不本意という表情を見せながらも――
「ふん、仕方ないです。私に名前をつける名誉を与えてあげましょう。貧相な少年」
今度は、ずいぶんと上から目線だ。しかも、また「貧相な少年」と言われてしまう。
すると、彼女はまたガーネットに頭をたたかれる。
「本当に破壊されたいのですか?」
「ゴメンナサイ、もうふざけません――」
「ハ、ハ、ハ……」
さて、彼女の名前か――やはり、宝石からもらうかな?
彼女は美しい青色のショートヘアなので――
「ラピスラズリはどうかな?」
「わかりました。いまからラピスラズリと名乗ります。ご主人様」
「エリオットでイイよ」
「わかりました、エリオット様」
こうして、また一人仲間ができたのである。




