第五話 ボクしか知らない隠しダンジョン⑤
クリスタルの中から現れた謎の少女――
彼女は、ダンジョンのラスボスである巨大な魔物、イフリートを素手で殴り倒してしまうのだった。
いったい、彼女は何者?
いまだ呆然としているエリオットのところへ、メイド服の少女が戻ってきた。
「対象を排除しました。もう、脅威はありません」と彼女は相変わらず、感情のこもっていない話し方で伝えてくる。手には真っ赤に輝く大きな石が――魔石だ。この世界の魔物は消滅と同時に魔石というコアを残すことがある。それをエリオットに見せたのだ。排除した証拠――だと、言いたいのだろう。
もう安心――のはずなのに、エリオットのカラダはまだ震えていた。
「あのう、どうかしました? 体調が悪いのですか?」
青ざめているエリオットを心配してか、少女は手を少年のオデコに当てようとした。だが、エリオットは無意識に後ずさりしてしまう。
「もしかして、私が何か気に障ることでも?」
そう言われて、エリオットは「はっ!」とする。
「う、ううん。そんなことはないよ。ボクこそゴメン。そのう、キミの戦い方があまりにもスゴくて……」
思わず見とれていた――そう、相手に伝える。
「そうでしたか。それならイイのですが――」
「それよりも、キミは誰? どうして、クリスタルの中から出てきたの? それにイフリートに触れてヤケドもしていないのは? イフリートは物理攻撃が効かないはずなのに、どうやって素手で倒せたの!?」
矢継ぎ早に、エリオットはメイド服の少女へ質問してしまう。それだけ混乱していた。
「そうですね。ひとつずつ回答させていただきます。まず、私が誰かですが――この辺りに存在していたバルディア帝国の王宮で従事していた汎用アンドロイドです」
「はんよう……あん……なに?」
彼女の説明では、外見を人間に極力近づけた機械人形――それをアンドロイドと言うらしい。
「機械人形!? 本当に!? 人間にしか見えないのだけど?」
「はい、肌の感触、体温も人間のそれを再現しています」
「肌の感触、そ、そういえば――さっき……」
エリオットは彼女の豊かなムネに目が行ってしまう。さきほど、彼女に抱き着かれたとき、二つの膨らみがしっかりと感じ取れた。アレも女の子のそれ、ソノモノだった。
まあ、女性のムネに触ったという記憶はないので、あくまでもイメージで……
自称、アンドロイドは彼の視線が自分のムネに向かっていることに気づいたようで――
「私のムネに興味がありますか?」とたずねてきた。
「――えっ?」とエリオットは顔を赤くする。
「大変申し訳ございません。性処理機能はオプション扱いのため、私には装備されていません」
「えっ? せ、せいしょりぃ!? な、な、な――」
いきなり、そんなことを言われて、取り乱してしまう。
「ご所望でしたら、オプションパーツが残っているか確認いたしますが――」
「パ、パ、パーツ!?」
パーツ――って、どこのぉ?
ヘンな妄想をしてしまう、チェリーボーイのエリオットであった。
「そ、それはイイから――そ、そう名前は?」
慌てて、話を逸らす。
「名前――ですか?」
「そう、キミの名前。『アンドロイド』というのは機械人形のことでしょ? だったら、キミ個人の名前があるよね?」
「個体名のことでしょうか?」
個体名と言われると何か違うような気がするが……
「うん。多分、そういうの」
「ですと、現在は空白です」
「――えっ?」
「すでに個体名は『期限切れ』となっております。製造番号はAS〇〇〇四ですが――」
「期限切れって……それじゃ、なんて呼べば……」
「でしたら、私に名前を与えていただけますでしょうか?」
――えっ?
「ボクが?」
「はい」
「そんな、急に言われても……」
「でしたら、ランダムに決めてしまいますが――」
さすがにそれではかわいそうだ。
「ちょっと待って――」
エリオットは彼女の髪を見た。とてもきれいなオレンジ色のショートヘアだ。
「それじゃ、ガーネットはどう? キミの髪の色がガーネットという宝石の色と同じなんだ」
「ガーネットですね。承知いたしました。それではご主人様、よろしくお願いします」
「――えっ? ええっ! な、なんで『ご主人様』なの!?」
「固有名の付与は所有者の証になります。ですので、今からご主人様が私の所有者になります」
「ええぇぇぇぇっ!」




