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ボクしか知らない隠しダンジョンでSSRアイテムばかり掘り出し大金持ち  作者: テツみン


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第四十一話 ボクしか知らない、負けられない勝負⑤

 タハールは半年前からマドロウ商会で小麦の仕入れを担当していたそうだ。

 それまでは王都物産というところで穀物取引を行っていたらしいが、マドロウ商会が「本格的に小麦の取引を始めたいから、調達責任者として来てくれないか?」と誘われたらしい。


「まあ、給料にひかれた私が悪いのですが――」とタハールは苦笑いする。


 そういえば、小麦のパンが増えたのも、そのころだったな……なんて、エリオットは思い出す。


 そもそも、冷涼で土壌も痩せているアウグスト領内は小麦の生産がむずかしく、もっぱらライ麦や燕麦(えんばく)を主食としていた。

 マドロウ商会が小麦をアウグスト領内に持ち込んだことで、マリーのような小麦のパン屋が現れたのである。


 酸味があって食感も硬いライ麦パンと違って、ふっくら食べやすい小麦のパンはアウグストの街で瞬く間に人気が出たのだ。



 王都商会で働いていた時に得た人脈を使って、小麦の調達を行っていたタハールだったが――


「結局は流通ルートの構築が目的だったみたいなんだ。小麦の産地とつながりを得たところで、私は調達から販売部門へ移動させられたのですよ」


 そして、一週間前――マドロウから小麦の販売価格を二倍にするように指示されたらしい。


「もちろん、そんな値段じゃ誰も買ってくれない。だから、いろいろ理由をつけて、販売価格を据え置いていたんですが、それがバレてしまいまして――まあ、(てい)のいい、解雇理由にされたんですよ」


 マドロウはアウグスト領内で小麦の流通からパンの販売までを独占したいために、タハールを利用した。そして、用済みになった彼をクビにした――そういうことのようだ。


「ですから、エリオットさんも気をつけてください。もしかしたら、マドロウはエリオットさんを利用して何かをしようとしているのかもしれません」


 自分のように利用するだけ利用され、捨てられないように――

 タハールはそう助言するのだった。


「わかりました。ありがとうございます――それにしても残念です。マリーさんのパンが食べられなくなるなんて……そうだ、タハールさんが独自で小麦を買い入れて、マリーさんへ売る――なんてことはできないのですか?」


 今の話だと、タハールは小麦の産地とつながりがあり、人脈も持っているようだ。なら、マドロウ商会に頼らず、小麦を調達してマリーさんに販売すればいい――そう、エリオットは提案するのだった。


「いや、さすがにムリですって。小麦の産地は王国の南部なんです。そこから輸送するのにだって、多額のおカネが必要になるんですよ」


 それに製粉や袋詰め、そういった加工には高価な石臼(いしうす)や人件費が必要なのだと彼は言うのだった。


「それって、いくらくらいなんですか? ボクが出します!」

「いやいや、いくらなんでもそんな大金はムリですよ」

「大丈夫です! 大雑把(おおざっぱ)でイイので見積もれませんか?」


 エリオットが真剣な顔で頼むので、根気負けしたタハールはため息をひとつついて――


「そうだな……マリーさんのところで使う小麦が一カ月で五百キロとして、産地での購入は一キロ銅貨一枚くらい程度なので、多めに見積もっても金貨一枚もあれば充分かな?」


 輸送費は陸路と水路、合わせても金貨一枚あれば大丈夫らしい。


「問題は製粉と袋詰め作業なんです」


 製粉に必要な石臼は高価で金貨四、五枚もするらしい。そしてなにより、その作業を行う人を雇うことになるのだ。


「ひと月分だけとかなら、王都物産に頼んで、その作業をやってもらうこともできますが、継続するとなると、石臼の購入や人を雇うことになります。作業場や倉庫だって必要でしょう。そうなれば、最低でも金貨数十枚は最初に用意しておかなければなりません」


 商売が安定するまで、さらに毎月、金貨十枚くらいかかると思ったほうがイイ――そう、タハールは説明する。


「わかりました。それでは金貨五十枚を用意します。それで、千キロの小麦をアウグストに流通させるルートを構築してもらえませんか?」

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