第四十話 ボクしか知らない、負けられない勝負④
マドロウから「魔鉱石を直接、高値で引き取りたい――」という申し出をいったん保留してきたあと、マリーの店に立ち寄ったエリオットたちは、そこでマリーの店が今週で閉店すると伝えられるのだった。
「ど、どうしてですか!?」
「いや、実は小麦が手に入らなくなっちゃってさ――」とマリーはヘラヘラ笑う。
小麦の在庫は一週間分しかないので、小麦がなくなりしだい店をたたむそうだ。
「ど、どうして、そんな急に――」
「この街ってさ、小麦の流通をマドロウ商会が独占しているんだよね」
「えっ? マドロウ商会?」
マリーからマドロウ商会の話が出てきて、エリオットはビックリする。
彼女の話はこうだ――
マリーはこの街で店を開くにあたり、マドロウ商会から小麦を買う契約をした。
しかし、マドロウ商会には自身の経営するパン屋があり、そちらへ小麦を優先して卸すため、「マリーの店へ売る価格を二倍にしろ」と、支配人、マドロウの指示があったらしい。
「さすがにそれではかわいそうだと、マドロウ商会で小麦の仕入れを担当していたタハールさんがこっそり、価格を据え置いてウチに卸してくれていたんだ」
しかし、それがマドロウの耳に入って、タハールという人は商会をクビになった。そして、マリーの店には今後、小麦を卸さないという通達が一方的にあったんだという。
「そんな……ヒドイ……」
販売の独占をイイことに、小麦の値段をつり上げるどころか、ライバルの店を排除しようとするなんて……
「まあ、仕方ないよ。この街はマドロウ商会からでしか小麦は手に入らないから――きっと、誘いを断ったから、それを根に持ったんだろうね」
「根に持った?」
どういうことか――と質問すると、マリーはこんなふうに話してくれた。
それは一週間前のこと――
マリーの評判を聞き、自分の店で働いてほしいとマドロウから誘われたらしい。しかし、自分の店を持つことが夢だったマリーはそれを断ったのだとか――
「ほら、私って自分なりの作り方があるでしょ? だから、大きな店で他人と一緒に作るってムリなんだよね」とマリーは笑う。
「だからって、そんなイヤガラセをしてくるなんて……」
その時、入口から若い男性が入ってきた。
「マリーさん、あいさつにきました。今日の馬車で王都へ帰ります」
「そうなんだ――また、王都物産で働くの?」
「いや、さすがにそれではムシがいいので――別の仕事を探しますよ」
「そうなんだ――」
そんな会話をマリーさんと男性はしていた。
「えーと、この人は?」
「この人がさっき話していた、タハールさんだよ」
「ああ……」とエリオットはうなずく。
マドロウの指示を無視してマリーの店へ小麦を安く卸していたために、クビになった人だったと思い出す。
「ホント、ゴメンね。ウチのためにこんなことになって」
マリーがすまなそうに謝ると――
「いえ、こちらこそ申し訳ない。実のところマリーさんの件は口実で、私はいずれクビになっていたみたいです」
そんなことをタハールという若者は言う。
「マリーさんの件は口実?」
その話が気になって、エリオットは思わず口を挟んでしまった。
「えーと、キミは?」
「この子がエリオット君だよ。前に話していた――」とマリーがタハールに紹介すると――
「ああ、よく買いに来てくれる少年とはキミのことか――」と、タハールは改めて自己紹介をした。
「あのう、もしよかったら、マドロウさんとのやり取りを詳しく聞かせてもらえませんか?」
そうエリオットは彼にお願いする。
「いやあ、さすがに部外者へ話すようなことじゃないので――」と、タハールは遠慮するのだが――
「実はボク、マドロウさんにさっき会ったんです」
「――えっ?」
さすがに、タハールとマリーはビックリする。マドロウから魔鉱石を直接、商会へ卸してほしいと頼まれたことをふたりに話すと――
「そうだったんだね――こんなことはあまり言いたくないんだけど、マドロウの話は信用しないほうがいいよ」
そうタハールは忠告する。
「それって――」
「はずかしい話、私はマドロウに騙されたんですよ」
「――騙された?」




