第三十六話 ボクしか知らない、強さの秘密⑥
「つまりだ。ギルドとしてはエリオット君の身柄を拘束してでも、そんなヤツらと接触させないようにする――そういう判断もあったんだ」
エリオットはすでに、この街の『重要人物』なんだと説明するマコーミック。その扱いについて、最悪そういうことも考えていた――と伝えられた。
「こ、拘束――って、そうなったら、ボクの自由は?」
「もちろん、そんなモノはない」
マコーミックはサラっと応える。
「そんなモノって……」
「あたりまえだ。未知のダンジョンの情報を奪われるくらいなら、内密に《《処理》》してしまうことだって考えていた」
内密に処理って――
「どうだ? 自分の立場が理解できたか?」
「は、はあ……」
なんかタイヘンなことになっていた――ということだけは理解できた。
「まあ、結論から言えば、拘束はしない」
そう言われて、エリオットはホッとする。
「当然だろ? 拘束しようとして、そのおネエちゃんと一緒に暴れられてでもしてみろ。ギルドハウスが瓦礫になってしまう。そうだろ?」
そうだろ――と言われてものなあ……
エリオットは苦笑いで誤魔化した。
「それで、ココからが本題だ」とマコーミックはやっと話を進める。
「エリオット君が持ち込んだ武具はアウグスト辺境伯が買い取ってくれることになった」
「えっ? 領主様が?」
このアウグストの街はもちろん、王国北部一帯を領地とするアウグスト辺境伯爵――そんな人物が武具を買い取ってくれる?
「それぞれ、金貨千枚」
「千枚!?」
「それと、魔石も正式にイフリートのモノだと断定した。それも辺境伯が買い取ることになり、討伐報酬を含めて金貨三千枚、合わせて金貨五千枚を辺境伯が支払ってくれることになった」
「ご、ご、ご、五千枚!!」
つまり、一生、豪遊してもまだおつりが出るほどのおカネをエリオットは手に入れてしまったのだ!
さすがに額が大きすぎて、取り乱してしまう。
そんなエリオットの様子を気にする素振りも見せず――マコーミックは何食わぬ顔でテーブルに一枚の紙を置いた。
「オレからの紹介状だ。それを持って、辺境伯に会ってきなさい」
「りょ、領主様にあ、会う? ボ、ボクが? 大丈夫なのですか?」
貴族でさえ、話もしたことがないのに――いきなり、領主である辺境伯と面会しろと言われ、ビビッてしまう。
「だから言っただろ? オマエさんはもう、領内でトップクラスの重要人物なんだって。辺境伯と会うくらい、当然の待遇なんだよ」
そう言われてもまだ信じられない。
「さっさと行って、辺境伯の気が変わらないうちに、金貨五千枚をもらっときな!」とマコーミックは執務室からエリオットを追い出そうとするのだった。
(領主様と会うなんて……ど、ど、ど、どうしよう……)
妙に緊張するエリオットである。
*
その時、執務室の外で、ドアに耳を当て中の会話を聞いていた人物が……
「あら? 鑑定士のカポネさん? いかがしました?」
偶然、通りかかったアマンダに声をかけられ、細身で神経質そうな男性が慌てる。
「えっ? あ、その……そうそう、執務室に忘れ物をして――」と言い訳をする。
「そうでしたか、それなら中に入っていいか、ギルドマスターに聞いてみますね」
アマンダがそう言うと、「いや、それはちょっと――」と男性は断るのだった。
「どうしてですか? 忘れ物を取りにきたのですよね?」
「そ、それが――そうそう、どうやら勘違いだったみたいで、ハ、ハ、ハ……それでは、失礼します」
そう言って、男性は頭を何度か下げながら、離れて行くのだった。
「――?」




