第三十五話 ボクしか知らない、強さの秘密⑤
単なる『体当たり』で、『元』であるがS級冒険者を吹っ飛ばしてしまったエリオット。
マコーミックもそれで満足したようだ。
ふたたびギルドマスター執務室に戻って、何ごともなかったように三人は座る。
(――実技場の壁にヒビが入るくらいの衝撃だったのに、こうして平然としているなんて――やっぱりS級冒険者ってすごいな……)なんて、考えてしまうのだった。
「まずは、エリオット君の実力を疑って悪かった。ハッキリ言って、想像をはるかに超えていたが、もはや、こちらが気に病むレベルではないことがわかった」
気に病むレベルではない――?
「その表情だと、言っている意味がわかっていない――という感じだな?」
マコーミックに言われ、「ええ、まあ……」と正直に応える。
「はあ――まあイイ……正直なところ、エリオット君はこのアウグスト領内で一、二を争う重要人物となっている」
「――えっ?」
自分が重要人物!?
「な、なんでですか!? ボクはただの掘削士ですよ?」
やっぱり、わかっていない――と、マコーミックは毛のない頭を掻く。
「オマエなあ……貴重な魔鉱石だけでなく、イフリートを討伐したと言って、それらしい魔石も持ち込んできやがる。そして、今度は国宝級のお宝だ。そんな人物が現れたら、注目をしないヤツはいないって……」
「こ、国宝級!?」
「ああ、あんなモノはウィルハース王宮の宝物庫にも有りはしない――とっくに気づいていると思ったのだが……」
まあ、古代人が製造したモノであれば、そういうこともあるだろう――なんて、考えてはいたが、まさか、あれもそうだったとは――
「一応、エリオット君が持ち込んだ品物については口外しないよう、ギルド職員には伝えてある。しかし、どこで情報が洩れるかわからない。それに、イフリートの件はもう知れ渡っている。つまり、大金を所持している非戦闘職が街中を歩いているんだ――そりゃもう、いつどこで狙われても不思議じゃない」
「はあ……」とエリオットは気の抜けた返事をした。
「カネ目当てだけじゃない。イフリート討伐した人物を打ちのめして、自分の名声を高めようと考える輩もいるかもしれない」
「打ちのめすって、ボクは非戦闘職ですよ?」
「オレを吹っ飛ばすようなヤツが、いまさら非戦闘職気取るんじゃねえ」と怒られ、エリオットは「ゴメンナサイ」となぜか謝るのだった。




