第三十三話 ボクしか知らない、強さの秘密③
どうして、こうなった?
今、エリオットは冒険者ギルドハウスの地下にある実技場にいた。
ココは、戦闘職の冒険者が実技の訓練を行う場所である。つまり、非戦闘職のエリオットには無縁の場所だ――いや、そのはずだった。
「勝敗は簡単だ、お互い『マイッタ』を言うか、気を失ったら負け。当然、死んでも負けだ」
死んでも負けって――
「あのう……ボクは非戦闘職なのですが」
念のため、そう伝えてみる。
「ああ、もちろん知っているぞ」
「だったら、なんで――」
エリオットがまだ喋っているというのに、マコーミックは剣を取りに行ってしまった。
「これは、訓練用の剣――つまり、刃はない。それでも当たればケガするし、当たりどころが悪ければ死ぬこともあるだろう」
そう言って、手にした剣をブンブンと振り回す。
その素振りを見ただけで、一般人なら卒倒しそうなのだが……
「あ、あのう……ボクの武器は?」
「何を言っている? 非戦闘職は武器の所持を認められていない。常識だろう?」
常識だろう……って、それは訓練用だとしても剣を持っている相手と素手で戦えということ!?
「ああ、少年は掘削士だったな。なら、つるはしは使っていいぞ」
いや、つるはしは武器じゃないんだけど――とエリオットの顔がピクピクとひきつった。
マコーミックは元S級冒険者だったと聞いている。ギルドマスターに就任した時、現役を引退したのだが、今でも師範役として、冒険者の指導は続けているそうだ。
ウワサによると、ココの冒険者でマコーミックと勝負して勝った人物は、いまだいないらしい。
そんな人物と武器なしで戦えというのだ。常軌を逸している――ふつうなら……
「どうする? つるはしを持ってくるか?」
そう言われて、エリオットは「はあ――」とため息をついた。
「イイですよ、このままで――」と応える。
「ふん……なら、遠慮なく――」
そう言った瞬間、マコーミックのカラダが消えた。いや、ものスゴい勢いで、向かってきたのだ。
その動きたるや、グエルの比ではない!
(やっぱり、S級の戦闘職はスゴいなあ……だけど……)
エリオットはこっそり無限収納リングから取り出した『スロータイマー』を作動させる。
自分自身の時間の流れが二十四倍になる。つまり、自分以外は速度が二十四分の一に遅くなるのだ。
そうなれば、いくら超人クラスのマコーミックでもその動きは一般人の歩行速度よりも遅い。避けようと思えば、簡単に避けられるのだが、あえて動かなかった。
スローモーションのように、マコーミックの剣がエリオットの左肩に向かってきた――だが、あと数センチというところでピタッと止まる。
(あれ?)と思い、『スロータイマー』を停止してみると――
「おい。なぜ避けない。いくらなんでも、まともに食らえば死ぬぞ」
「まあ、そうかもしれませんね。ふつうなら……」
エリオットは何とも言えない表情を見せる。
「ふつうなら……か。つまり、何か魂胆があった――ということだな?」
マコーミックに言われ、エリオットは「ええ、まあ……」と歯切れの悪い受け応えをした。
エリオットは古代王宮の宝物庫から持ち出した『反射器』を手首に装着している。
自動的に攻撃を『反射』してしまう――という、とんでもない品物だ。
なので、相手の攻撃を完璧に防御してしまうどころか、こちらの攻撃に変えてしまう。
その効果はすでにグエルの時で実証済みだ。
「なるほど、魔道具か――いったい、どんなモノかは知らぬが、その様子だと、守りに関しては無敵のようだな」
「…………」




