第三十二話 ボクしか知らない、強さの秘密②
「え、えーと……ボクにどんなご用でしょうか?」
ギルドハウスの軽食エリアでミルクを飲んでいたエリオットのところに、アマンダがやってきて、ついてくるように言われた。しかもガーネットも一緒に――だ。
仕方なくついていくと、そこはギルドマスターの執務室だった。
ソファにはスキンヘッドでイカツイ顔の男性が腕組をしながら、エリオットたちを待っていた。彼がギルドマスター、マコーミックだとエリオットも知っている。
「あ、あのう……」
怖い顔でじっと目をつぶっているから、エリオットは身震いする。
「オレが言いたいことはわかるだろ? 少年、キミが持ち込んだ品物のことだ」
すぐに古代王宮の宝物庫から持ち出した片手剣と胸当てのことだと理解した。
「はあ……」とエリオットは応える。
「いったい、どこで手に入れた?」
ドスの効いた声でたずねられた。
「ですから、キラ火山の第五階層を掘っていたら……」
その時、ドンッとテーブルをたたかれた!
「そんなウソがバレないわけないだろ!」
銅鑼のようなハラに響く声で怒鳴られ、エリオットは「ひいっ!」と短い悲鳴を漏らしてしまう。
「ウチの調査隊が第五階層をしらみつぶしに調べたよ。しかし、こんなモノが掘り出された形跡などなかった。そもそも、これがどんなモノかわかっているのか!」
「す、すみません……どんなモノでしたでしょうか?」
ちょっとは上等なモノだろうとは思ってはいたけど、正直、武具の価値なんてよくわからない。
それでも、掘り出した武具の中では一番安物っぽいモノを選んで持ってきたつもりなのだが――
(いきなり、スゴいモノを持ってきて、騒がれてもイヤだなぁ……なんて、思っていたのだけど、これでもダメだったか……)
そう、エリオットはため息をつくのだった。
「あれはなぁ、すでに製法が失われてしまった金属で作られている。つまり、古代人の作った武具なんだよ」
マコーミックに言われて、「はあ……」とエリオットは気の抜けた返事をする。
「その様子じゃ、知っていたようだな?」
「えーと、ハ、ハ、ハ……」
完全に見透かされていた。
「オマエ、新しいダンジョンを発見したんだろ?」
「――えっ?」
いきなり、そんなことを言われて、ドキッとしてしまう。
「冒険者の規則に、『未知のダンジョンを発見した場合、ギルドへ報告する義務』というモノがある――当然、知っているな?」
もちろん、エリオットも知っていた。ギルドへ加入する時、そういう説明があったのだ。
「発見したダンジョンをひとり占めしたい気持ちはわかる。だがな、未知のダンジョンはどんな危険があるのかわからない。場合によっては国が滅ぶことだってある。だから、報告義務があるんだ。それはわかるな?」
「は、はい……」
「だったら――」
「それでも言えません」
隠しダンジョンは空間転送装置によってでしか入れない。しかも、皇帝の血をひく者だけが入れる。
そうだとわかっても、空間転送装置のことを教えてしまったら、こと細かく調査されるだろう。場合によっては、装置が分解されてしまうかもしれない。
冒険者であるエリオットには、冒険者ギルドの判断に従わざるを得ない義務がある。空間転送装置が分解されるのを黙って見ているしかないのだ。
つまり、もう二度と古代王宮の宝物庫に入れなくなってしまうのである。
「――わかった。それならオマエを冒険者ギルドから除名するしかない。そうなったら、もうキラ火山のダンジョンにも入れないのだぞ。それでイイのか?」
アウグスト領内にあるダンジョンは冒険者ギルドの管轄下にある。つまり、冒険者でなければ入出はできない。
いまのところ、古代王宮に入れる転送装置はキラ火山にしかないので、そうなると古代王宮の宝物庫にも行けなくなる。結局は同じだが、それでも、転送装置が壊されるよりはマシだ。
抜け道はきっとあるはず――そう考えた。
「致し方ありません」とエリオットは応える。
その言葉を聞いて、マコーミックは困り果てた表情を見せたあと――
「なあ、少年。なにも、オレたちはお宝を横取りしようとしているわけじゃない。状況によっては、オマエにダンジョンの優先採掘権を与えてやってもイイ。それでも、話してくれないのか?」
エリオットは「申し訳ありません」と言うだけだった。
すると、マコーミックはまた腕組をして黙り込んでしまう。
一分後――
「よし、わかった。なら、今から地下の実技場へ行くぞ」
「――えっ?」
実技場?
どういうこと?
「少年、オレと勝負だ!」
――えっ?
「え、えぇぇぇぇっ!」




