第三話 ボクしか知らない隠しダンジョン③
「……ここは?」
目覚めると、エリオットは真っ暗な空間にいた。
「どうして……ボクはココに?」
しばらくボーッとしていたが、だんだん記憶が戻ってくる。
「そうだ……ボクはイフリートから逃れるために、火口の底を崩落させたんだ」
その崩落は予想をはるかに超える規模だった。エリオットはそれに巻き込まれ――そのあとの記憶がない。
どうやら、気を失っていたようだ。
「ボクは助かった――のか?」
真っ暗で、状況がわからない。ただ、カラダは動かせる。あちこちに痛みはあるが、骨折みたいな大ケガではなさそうだ。
「と、とにかく灯りを――」
奇跡的に、背負っていたリュックもそのままだった。エリオットは暗闇の中、リュックをまさぐり、松明を取り出す。
「――ファイア」
エリオットがそう唱えると、彼の指先がポウッと明るくなる。小さな火が現れたのだ。魔法適性の低いエリオットでも、このくらいの生活魔法は使えた。
その火で松明を灯す。辺りがぼんやりと照らし出された。
「ココは――洞窟?」
思っていたよりも大きな空間らしい。地面は見えるが、その先は暗闇である。天井も見えない。
「キラ火山のダンジョンは五階層が最下層と言われていたのに――それより下にこんな空間があったなんて……」
つまり、彼は新たな階層を発見した――ということになる。
「だけど、あきらかにキラ火山の地質と違う――ということは、別のダンジョン?」
なにより、この辺りにはたくさんの『何か』を感じた。掘削士であるエリオットだから感じ取れる気配――つまり、これは鉱脈の気配だ。
「暗くて見えないけど――間違いない」
エリオットは地面に松明を近づけた、そこにはキラキラと光る物体が――
「クリスタル? こんな大きなモノは見たことがない」
よく見ようと顔を近づける。すると、透明なクリスタルの中に、何か別のモノが見えた。
「なんだ? 首飾りのように見えるけど――」
カタチまではっきりわかるのは、クリスタルの透明度がそれだけ高いということだ。
手に取ると、いきなり「ピシッ!」という音が響いた。そして、クリスタルに無数の亀裂が入って――
「うわっ!」
クリスタルが粉々に割れると、中にあったモノだけが手に残った。
「ああ、ビックリした……でもこれって――やっぱり、首飾りだよね? どうして、こんなところに?」
どのような品物なのか、顔を近づけてしっかり見ようとする。しかし、松明の灯りだけでは色さえよくわからない。
「もっと、明るくならないかな?」
そう声にしたら、突然、首飾りが輝き出した!
「な、なんだぁ!」
驚いて、その首飾りを落としてしまうのだが、輝きは保ったままだ。
「でも、おかげでこの辺りがハッキリ見えるようになったぞ」
首飾りから発せられる光は松明よりはるかに明るい。洞窟の天井まで光が届いていた。高さにして十メートルほどだ。
地面の様子もよくわかる。いくつものクリスタルが顔を出していた。光に照らされ、キラキラと輝いている。
「それだけじゃない! アレはミスリルの鉱脈だ。あっちにはアダマンタイト鉱石もある!」
貴重な鉱脈だらけに、エリオットは興奮するのだった。
試しに、小さなクリスタルを拾い上げる。
「やはり、これにも何か入っている? うーん。首飾りが眩しくてよく見えない」
光が当たる方向を調整してくれないかな?
なんて、勝手なことを考える。すると――
「――えっ?」
突然、光の当たる範囲が狭まり、手にしているクリスタルだけを照らしていた!
「まさか……これって、ボクが見たい場所だけを照らしてくれるの?」
自分の考えたことを理解している――とても信じられないが、そうとしか思えない。
「この首飾り、とても貴重な品物なんじゃないかな?」
そんなモノがこんな洞窟にあったこと自体、不思議なことだが、今はそれよりも――
「やっぱり、この中にも何か入っている」
小さい輪っかのようなモノがクリスタルの中に見えていた。
割って中を取り出してみよう――そう考え、こちらも運良く崩落した岩の中に埋もれずにいた《《つるはし》》を拾い上げ、クリスタルに打ち込んだ。
パリン!
小気味良い音が響いて、クリスタルが真っ二つに割れると、中から出てきたモノは――
「これって、指輪だよな? スゴい装飾だ。これもきっと、かなりの値打ちモノに違いない」
こうなると、手当たりしだいクリスタルを拾い集めて中身を見てみよう――なんて、思ってしまう。
エリオットは光る首飾りを首にかけると、正面を照らしながら、クリスタルを集め始める。進んで行くうちに、何か心が惹かれるものが――
「なんだろう……とても、ワクワクする」
拳の大きさほどが地面から頭を出しているクリスタル。そんなモノはこの辺りにいくらでもあるのに、これだけとても気になる。
「なんか感じる――これを掘るために、ボクはココにやってきた。そんな気が――」
きっと、ココにボクの人生を一変させる何かが埋まっている!
どうして、そう思ったのだろう――いや、それは今、どうでもイイことだ!
エリオットはそのクリスタルを掘り出そうと、夢中でつるはしを打ち込んだ。掘り出していくうちに、そのクリスタルが巨大なモノだとわかってきた。それだけない――
「これって、ヒトの姿に見えないか?」
自然にそういうカタチになったとはとても思えない。誰かがある人物に似せて彫った――そういったモノだ。
こうなったら、全身を掘り出してやる!
そう考えて、エリオットは動きを速めた。すると……
「間違いない、ヒトの像だ――」
いや、ただのクリスタル像じゃない! 中に何か入っている。人形のような……
その時――
グシャァァァァッ!
大量の土砂が突然盛り上がり、飛び散ると中から真っ赤な光るモノが現れた。一瞬で空間に熱がこもる。
「イ、イフリート!? 一緒に落ちてきていたんだ!」




