第二十三話 ボクしか知らないSSRアイテム②
朝、エリオットが起きると、三つに分けられたクリームパンが食卓に置かれていた。
「――これは?」
「はい、朝食と一緒に食べていただきたいと思いまして切り分けしました」とガーネットは言う。
「そんな……これはガーネットのために買ったって――」
「はい、ですから私はもう充分に堪能いたしました。ですから、あとは三人に食べていただきたいのです」
クリームパンもそれを望んでいます――なんて彼女は言うので、エリオットも「それじゃ……」ということになった。
食事が終わると、エリオットたちはダンジョンへ向かう準備を始める。
「お兄ちゃん、またダンジョンに行くの?」
妹のセシルにたずねられ、「うん、そうだよ」と応える。
「どうして? もうたくさんおカネをもらったんでしょ? 私の病気も治るんだし、もうお兄ちゃんがアブナイお仕事をやる必要はないんじゃないの?」
「そうだけど、ボクには新しい夢ができたんだ。セシルを学校に行かせる夢が――」
「――えっ?」
黒髪の少女がビックリしている。
「ど、どういうこと?」
「セシルは言っていたよね?『病気が治ったら、学校に行ってお友達をたくさん作りたい。いっぱい勉強したい』って――」
小さい頃から病気がちだったセシルは、同世代の子供と遊ぶことがほとんどなかった。だから、学校というモノにあこがれていたのである。
同世代の子供がたくさん通う学校に行って、友達を作る。そして、勉強して、自分のような病気の子供たちを治すお医者さんになる――それが夢なんだと、エリオットは何度も聞かされていたのだ。
「で、でも、いくらおカネがあったって、私たちのような孤児は――」
「うん、だから、学校を作りたいんだ。誰でも通える学校を――」
身分やおカネでなく、学びたい意志がある子供なら誰でも通える学校を作りたい――そう、エリオットは彼女に話すのだった。
「あのダンジョンにはたくさんのアイテムが眠っているし、鉱脈もある。そう思うと、とてもゆっくりはしてられない。どんどん掘っていかないと、何年もかかっちゃうから――」
「でも、危険はあるのでしょ? モンスターも出るって――」
昔の王宮だった場所にはアンデット系の魔物が現れた。そこへ行くまでにも、キラ火山のダンジョンを通過する必要がある。キラ火山にはゴブリンが出没するのだ。
「うん、でもガーネットが守ってくれるし――」
すると、「はい、エリオット様は私が必ずお守りします。ですので、安心してください」とガーネットも言うのだった。
「ほらね」とエリオットは軽くウインクをしてみせる。
それを見て、セシルは少し黙ったあと、「わかった」と応えるので、エリオットはひと安心するのだが――
「それじゃ、元気になったら私もダンジョンへ行く!」
「――――――――えっ?」
「私もダンジョンへ行って、お兄ちゃんのお手伝いをする!」
いきなり、そんなことを言い出すので、エリオットは面食らう。
「な、何を言うんだよ! 遊びじゃないんだぞ」
「だって、危険はないんでしょ?」とセシルに言われると、「うっ……」と口ごもってしまうのだった。
「ハ、ハ、ハ――これはセシルのほうが一枚上手だね」とふたりの養母であるマリシアが笑う。
「ちょ、ちょっと、マリシアも笑ってないで、セシルに言ってあげてよ」とエリオットが頼むのだが、白髪のドワーフは、「まあ、イイじゃないか」と逆にエリオットが言われてしまう。
「だけど、まずは元気になることだよ、セシル」
マリシアの言葉に、セシルは「うん!」とうれしそうに返事をするのだった。
なんかやぶへびになってしまったと、エリオットは後悔してしまうのだが、その件は棚上げにして、さっそく、ガーネットと一緒にダンジョンへ向かうのである。




