第二十一話 ボクしか知らないお金の使い方⑥
「エリオット君も、クリームパン三個だっけ?」
エリオットは少し考えたあと――
「四個にしてもらえますか?」と訂正するのだった。
「はい、クリームパン四個ね」とマリーさんは出来立てのクリームパンが入った袋を差し出す。
「ありがとう。それじゃ、帰ろうか」とエリオットが言うと――
「えっ? 食べないんですか?」とローブの少女が不思議そうに見ていた。
「うん、家族で一緒に食べるから――そう言えば、キミも残りふたつは家族の分でしょ? 自分だけ先に食べちゃってよかったの?」と思わず訊いてしまった。
すると、少女はまたうつむいて、黙ってしまう。
なんだろう……と思っていたら――
「レナちゃんは三つとも自分で食べるんだよね?」とマリーは暴露するではないか!
「えっ? 三つとも?」
「そ、すぐに食べる用、家に帰って食べる用、そして、寝る前に食べる用の三つ」
「そ、そうなんだ」とエリオットはどういう顔をすればイイのか悩んでしまった。
「マリーさん! そ、それはナイショにしてくれるって!」
「ああ、そうだっけかぁ? ワルイワルイ!」とマリーは大笑いする。
「ハ、ハ、ハ――」
マリーにだけは絶対に秘密を打ち明けない――と誓うエリオットだった。
クリームパンの甘い香りをかぎながら、家に帰る途中、ガーネットからたずねられる。
「エリオット様? なぜ、クリームパンは四つなのですか? 三人しかいないのに」
「ん? 一個はガーネットの分だよ」
そう言うと、ガーネットは首を傾げる。
「ですが、私は食べられないで――」
「そうなんだけどね。ガーネットがクリームパンをじーっと見ていたでしょ?」
そう言われて、「はい、とても美しいパンだな……と思いまして」と応える。
「だから、一個はガーネットにあげる。どうするかはガーネットが決めて」
すると、いつにも増して、ガーネットはエリオットをじーっと見つめていた。
ちょっと気になって――
「ど、どうしたの?」とたずねる。
「いえ……エリオット様が私のご主人様であることを神に感謝したいと思います」
そんなことを急に言われて、エリオットは「えっ? なんで?」と困惑してしまうのだった。
その夜、エリオットたちが寝てしまったあと――
テーブルの席にひとり座るガーネットは、月明かりであめ色に輝くクリームパンを見つめ、とても幸せそうだった。




