第十九話 ボクしか知らないお金の使い方④
マリーさんのクリームパンが焼き上がるまでの間、街を観て回っていたエリオットとガーネット。そこにグエルたちがやってくる。ギルドからもらった報酬を渡せと言うのだ。
断ると、相手は危害を加えようとしてきた!
その状況にガーネットが対処しようとしたので、「手加減して」とエリオットは伝える。
「――わかりました。それでは、多少のケガ程度で済むようにセーブして排除します」
そんなふうにガーネットが応答した。
「おいおい、メイドのネエちゃんよ。面白いこと言うじゃないか? 排除? やれるものならやってみろ!」
そう言って、クローゼが大きなカラダから大剣を勢いよく振り下ろす! それがガーネットのカラダに向かった!
ブンッ!
本気で殺しにきたクローゼのひと振りだったが、見事に空振りする。
「なっ!」
非戦闘職の少女なら、とうてい躱すことのできないクローゼの斬撃をいとも簡単に躱されて、クローゼだけでなく、他のふたりも面食らう。
だが、呆然としている余裕さえメイドの少女は与えない。あっという間にクローゼの背後に回ると、その太いクビに目掛けて手刀を加える!
「うっ!」と唸り声をあげたかと思えば、大男はそのままうつ伏せで倒れた。
「クローゼ!」
グエルが声をかけるが、すでにクローゼは気を失っている。
「このオンナ! いったいなにを!」
そう、メイドの少女に向かって叫ぶのだが、彼女は無言のままグエルに近づいていった。
「コ、コノヤロウ!」
そう言って、剣を振り上げた!
クローゼもそうだが、グエルも冒険者クラスで言えばD級。中堅である。つまり、平均以上の攻撃力を有している。だが、メイド服を着たあどけない少女の前では無力だった。
振り上げた剣を振り下ろす前に、ガーネットは彼の懐に入ると、その腕を掴み、一本背負いの要領で投げた!
「ぐふぁっ!」
なさけない悲鳴と一緒に、グエルは動かなくなる。
「ちょ、ちょっと、どういうこと?」
信じられない光景を目の当たりにして、震えている女魔導士のニグレアは、すでに戦意を喪失していた。だが、ガーネットはそんな彼女にゆっくりと近づく。
「わ、私は、グエルに言われて仕方なくついてきただけなの。だから、見逃して。ね? ね?」
恐怖で顔がひきつりながらも、笑顔でそう言い分けする女魔導士に、エリオットはヤレヤレという表情を見せる。
「エリオット様、そう言っていますが、いかがしますか?」
ガーネットがそう確認してくるので――
「えっ? なんのこと? ボク、聞こえなかった」とエリオットはとぼける。
「な、何を言っているの! 聞こえているでしょ!」
エリオットはクスッと笑う。
「ニグレア、それがヒトにお願いする態度?」
エリオットは、ガーネットに「やっちゃってイイよ」と指示すると、彼女は右手を上げた。
「や、やめて! わかった! わかりましたから、やめてください。お願い!」とニグレアは鬼気迫る表情で懇願していた。
「それじゃ、このふたりの目が覚めたら、もうボクにチョッカイを出すのはやめるように、言ってもらえるかな?」
エリオットがそう頼むと、ニグレアは「言う! 言うから!」と、悲鳴に近い声で応える。
「本当?」
「本当よ! 約束するから!」
エリオットは「はあ――」とため息をついて――
「ガーネット、もうイイや。行こう」とエリオットはメイド服の少女に伝える。
「――わかりました」
ガーネットは手を下ろすと、ニグレアから離れる。
「ふう……」と安堵する女魔導士に、エリオットは近づき――
「もし、ウソだったら、本当に殺すよ」
そう囁くと、エリオットは去って行った。
ニグレアはそのまま腰を抜かして尻もちをつくのだった。




