第十話 ボクしか知らない彼女の事情②
「ココがボクの家だよ」
いろいろと大変なことがあったのだが、エリオットは自分の家に戻って来られた。
ココは王国第二の都市、アウグストの郊外――城壁の外にあるのだが、小さな畑の中にそれはある。
「そのう、私もお邪魔してよろしいのでしょうか?」
ガーネットは心配そうにたずねてきた。
「もちろんだよ。ガーネットのおかげでボクはココに戻って来れたんだ」
もし、彼女がいなければイフリートに焼き殺されていた――エリオットはそう応える。
「エリオット?」
二人が家に入ろうとしたとき、後方から声がした。
「マリシア! ただいま!」
エリオットはニッコリ笑うのだが――マリシアと呼ばれ老婆は手にしていた袋を落として、彼に近寄る。
「本当にエリオットなんだね?」
そう言って、抱きついてきた。
「ど、どうしたの?」
「どうしたも、こうしたもないさ! アンタ、死んでなかったのかい?」
「えっ? どういうこと?」
それは、数時間前のこと。
冒険者ギルドの職員を名乗る人物がこの家に訪れ、エリオットがダンジョンで行方不明になったと説明していったらしい。
「もう、生きている可能性は非常に低いから、覚悟してください――そう言われてさ。セシルがそのまま寝込んでしまったんだよ」
「セシルが!?」
エリオットは慌てて家の中に入ると、ベッドで寝ている女の子を見つけ、その脇でひざまずく。黒髪をショートカットにしたカワイイ少女だ。
「さっき、やっと寝たところさ。寝かせておいてあげな」
老婆に言われ、「うん」と応えるエリオット。女の子の手をやさしく握った。
「心配させてゴメンね。セシル……」
寝ている女の子にそう声をかけてやるのだった。
それを見ていた老婆が「はあ……」とため息をついて――
「それで、いったい、何があったんだい? このメイドさんは?」
「あ、ゴメン。紹介するよ。彼女はガーネット。ボクを助けてくれたんだ」
「エリオットを助けてくれた? そうかい、それはどうもありがとうね。私はマリシア。ココでこのコたちと一緒に暮らしているドワーフさ」
「あっ、どうもガーネットです。マリシアさんはドワーフなんですか?」
エリオットと妹、セシルは幼い頃、ドワーフに保護され、育ててくれた。マリシアという老婆はその里の出身なんだそうだ。エリオットたちが里を離れ王国へ行くことになったとき、ドワーフの族長が彼女を紹介したのである。それ以来、エリオット兄妹は彼女と一緒に生活している。
「そうなんですね。エリオットさんは、こんなにすばらしいご家族がいらっしゃったんですね」
「よしておくれよ。それより、ガーネットさんだっけか? エリオットを助けてくれたお礼になにか――」
マリシアがそこまで話しかけたところで、セシルが目を覚ました。
「お兄ちゃん? 生きていたの?」
エリオットはもう一度、妹の手を握り――
「もちろん、死ぬわけないじゃないか? セシルを置いて、ボクは死なないよ」
「ヨカッタ!」
セシルはカラダを起こすとエリオットに抱きついた。
「セシルも起きたことだし、それじゃ食事にしようじゃないか。お嬢さんも食べるだろ?」
そうマリシアはガーネットにたずねるのだが――
「いえ、私は食事をいたしませんので――」とすまなそうに応える。
「なんだい? 遠慮しなくてイイんだよ」
「そういうわけでなく。機能的に食事が不可能なわけで……」
そう言われて、マルシアは困惑した顔を見せる。
「機能的? 不可能?」
仕方なく、エリオットが代わりに説明する。
「実は彼女、機械人形なんだ」
――えっ?
「「え、ええぇぇぇぇっ!」」




