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脳を蝕む鋼の芽  作者: そのえもん


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聖者の行進④

神の姿を求めて塔へ降り立つ。


しかし、扉は閉ざされたままであった。

かつての彼女なら受け入れていたことだが、今は違う。


どうぞご覧ください。

「虫けらの声じゃ耳まで届かないのか?ははん、いいご身分だね」


 腰の拳銃でどうにかなるものではないし、戦車やショットガンもない。しかし、元来多い血の気を失ったつもりはない。やろうと思えばいつでも力押しはできるのだ。

 その意思を汲み取ってか、数頭のラージャクラが地響き響かせて前に出てくる。金属生命体の比重は鉄より少し軽い程度、ラージャクラの巨体であれば、その体重は五十トン近いだろう。

 相手に実体がある限り、質量をぶつけるという方法は最も単純でありながら、無効化の難しい攻撃なのだ。


「あれだけ派手に、平和的に来てやったんだ。それなのに気づいてないは通らないよ。

 アタシは戦争に来たんじゃない。顔見せに来たんだ。それくらいわかるだろ?どうせ塔に引きこもってるんだ、話くらいさせてくれてもいいじゃないか。

 それとも今日に限ってドアが不調かな?そらならラージャクラのタックルなんてどうだい?マスターキーには申し分ないよな?」


 今は脅しと本気が半々であるが。時間が経てば経つほど本気に傾いていく。


「……反応がないんじゃ仕方ない。強めのノックでぶち抜くとしようか」


 何日か前に召喚したニラティが来てやったというのにコレだ。構うものか、どうせ連中にシュランダの見分けなんてつくはずもない。名乗ったところで覚えているかも怪しい。


『ねえ、マム。今、あっちが開いたみたいだよ?……聞こえたんじゃない?』


 ≠に袖を引かれて振り向けば、塔の側面に小さな開口部が開いていた。食い破られるよりはましということだろうか。


「こっちか……」


 解放されたのは奉納されたレアメタル回収用の大扉ではなくその脇、今まで存在すら気付かなかった小さな扉だ。

 歓迎しないどころか、使用人扱いだろうか。入れてやるだけありがたいと思えと言っているようであった。

 こうなるとますます神経が過敏になってくる。少し屈まねば通れない扉の寸法すら、通るのに頭を下げるのを強要されているようで、こめかみのあたりがひりつく。

 舌打ち。ツバでも吐いてやろうかと思ったところ、すぐ頭の上で低く分厚い唸り声が聞こえた。

 見上げると、それはすぐ背後にいる一頭のラージャクラであった。牙をむき出し、鼻先へ露骨に皺を寄せ……今なら判る、どうやらニラティと同じ顔をしているようだ。


「どうした?……おいおい、ちょっと……あ」


 ニラティが止めるより早く、そのラージャクラは頭上を跨いで通用門にタックルをぶちかました。五十トンを超える巨大質量のタックルに壁が大きく歪み、無残に拉げる。


「わぁお。ゴメンね、この子らわんぱくでさ」


 ニラティが冷笑を浮かべていると、ラージャクラはめくれたドア枠にかじりつき、その恐るべき膂力で開口部を大きく引き裂いた。


「仕方ないよね。この子らも入りたいってさ」


 涼しい顔で言い放つと、ニラティは楽団を引き連れて塔へと足を踏み入れた。無論、しゃんと背筋を伸ばしたままである。

 靴底が金属なのかセラミックなのかも分からない床材を踏みつける。恐らくシュランダの歴史上、強制査察以外で初めてヴァルセトラの塔に踏み込んだその一歩であった。しかし別段なんのこともない、起き上がって一歩歩くのと変わらなかった。


 神の住まうとされる塔の内部は、常に美しい音楽が流れ、花が咲き乱れ小鳥が歌う極楽浄土……ではなかった。もちろん光り輝くゲーミング都市でもない。

 無機質で狭苦しく、薄暗い廊下であった。

「ふぅん……神域ってヤツは、意外と地味だね」

 ラージャクラが壁を抉り天井を引き裂かなければ、中腰で進むようだったろう。

「なんだろね……神秘的な感じはゼロだ」

 壁や天井の一枚向こうは、名前も分からない機械や配線でびっちりと埋め尽くされていた。

 これらの機械が何に使われるのか、詳しいことはわからない。だが、シュランダのそれより遥かに緻密に発展した科学技術の結晶であることは一目でわかる。

『パランが言ってた別天体……他の星から来たっていうのは、本当なんだね』

 目を丸くして呟く≠に対して、ニラティはどことなく遠い目をした。

 限られた空間に機械や機能を極限まで詰め込み、限界まで無駄を排除した合理的な設計思想は、確かに大型戦車に通じるものがあった。

「ああ……そうらしい」

 どれだけ長い時間この塔はここにあったのだろうか。膨大な配線の隙間で、地層を形成する埃の岩盤を見れば、千年や二千年ではないだろう。

 その長い時間を、彼らは自らを神と偽り続けたのだ。先祖代々バカにされたようで、怒りより呆れが湧き上がってくる。

「ははん、ヴァルセトラはエスコートされ慣れすぎて、客人の対応を知らないのか?それともアタシは頭のおかしい働きアリかな?」

 楽団員達が壁をめりめりと抉り広げるのを待ちながら、ニラティはじわじわと廊下を進む。

 これは攻撃ではない。彼らにとっては挨拶であり、唯一にして至高のコミュニケーションなのだ。

 名前も知らない機械が齧り取られるたびに火花が散り、冷却液だかオイルだかが噴き出し……足元に小さなネジが一本転がった。

「ネジか……ああ、こいつら本当に神じゃないんだね」

 ヴァルセトラは神でも、それに次ぐ高次存在でもない。シュランダと同じ道具を使って物理法則を享受する生き物なのだ。

「……あれか、全部ぶっ壊さなきゃ出てこないのかな?」

 セラヴィンの態度に神経を逆撫でされ過ぎて真顔になりつつあるニラティだったが……それを止めたのは、目の前に割り込んだ一匹のチャペラであった。



ここまでお読みいただきありがとうございます、感謝感激でございます。

気に入っていただけたら、お気に入りやブックマークで応援してもらえると本当に励みになります。

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今回のニラティと楽団のやりかた、皆さんならどうしたと思いますか?

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※この作品はフィクションです。実在の人物・団体・出来事とは一切関係ありません。


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