果たせなかった約束 ④
前回の続きです。
ニラティがイェンラに何を頼んだのか、明かされます。
彼らは暫くその部屋にいた。ニラティの体調だけではなく、やれ避難計画がどうなるだのなんだのとごちゃごちゃくっちゃべっていた。しばらく付き合ってやっていたのだが、やがてヴィヤーサンとメレルツァは一旦大型戦車を離れることとなった。
作戦成功の報告と、今後の復興プランを考えねばならないそうだ。
「報告?誰に?ヴィヤーサンが頭じゃないの?」
「まあ、そのはずなんだけど色々とあってね。はーあ……気が重い」
「シャキッとしろよ、クレンズ。お前以外、タウラカ会長と面識のあるヤツいないんだぞ」
「……今ので倍重くなったよ」
「うげ、会長来てんの?」
その名前を聞くだけで、二ラティまで露骨に顔を引き攣らせる。流石にその様子を見てはメレルツァも気が引けてきたようだった。
「何者なんだあのじいさん、そんなに面倒なのか……二ラティは来れないのか?」
「……まだ起き上がれない。見苦しい所をお見せするわけにはいかないので、そのうちご挨拶に伺います。って言っといて」
ただ逃げるのではなく、しっかりと建前を考えている分、一層面倒な相手なのが伝わってくる。
「いやさ、別に何かされたとかはないんだけどさ、蛇みたいな目してるじゃん。
大丈夫だと思うよ、あの爺さんからすりゃあメレルツァの世代は孫みたいなもんでしょ?ゴマをすったり気に入られようとかせずにいりゃ、大丈夫じゃない?」
気休めではあるが嘘ではない。基本的に筋さえ通せば、ああいう人間は機嫌を損ねることはない筈だ。
「勘弁してくれ……どんなバケモノなんだよ」
「特等席で見せてあげるさ、君のことは若手ハンターの有望株と紹介しておく」
「やめろや。俺は気楽に生きたくてこんな生き方してるんだ、お偉方とのパイプなんて面倒ごとにつながる」
「そういう考えができる時点で、君は素質があるよ」
「ふざけろ」
「はぁい、ごゆっくりどうぞぉ」
ゲンナリした顔で出て行く男二人を見送ると、ニラティはイェンラに向き直った。彼女は男どもの愚痴には一切口を挟まず、ずうっとそれを読み込んでいた。
「よし、うっとおしいのがいなくなった。さあ、もう少し頑張ろっか」
「そうだな、えっと次は……」
二ラティとイェンラが向き合うのは、先ほどの殴り書きである。その傍らには何冊かの辞書と付箋、ボイスレコーダーと、オルノール詩集があった。
「頼んどいてなんだけどさ、よくこんなの見つけたね」
レコーダーとイェンラの私物であろう詩集はともかくとして、辞書が出てくるのは驚きであった。
「驚くことじゃない。興味がないから気付かないだけで、私と同好の士はそこそこいるんだ」
「へぇ……アタシが殺伐としてんのかねえ」
『それはそうなんじゃない?』
じろりと睨むと、背後で≠が笑っていた。無理もない話だ、ニラティが生きてきた時間で、詩を作ろうなどと思ったことは一ミリ秒だってないのだから。
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さて、ニラティがイェンラに頼んだのは詩の作成でした。
何をするつもりでしょうか?詩と言えば……。
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