また歩き出すおじさん
美幸の旅館は久志が弁償するという事で話がついた。
結果として、久志が来なければ今回の騒動はなかったという所で話が着地した。
明日には業者が来て工事に取り掛かる予定らしい。
支払いは日本円ではなく仮想通貨だ。
戦争が起きてから、日本の円は急速に暴落した。
人口が減り、産業もほとんどが壊滅した、そもそも鎖国状態なので
国民は自給自足の生活をしているが、やはりサービスの対価としての通貨は必要であり、この時代、戦後の日本でも通用するのは仮想通貨だった。
日本人が進化してから、急速に経済発展したが、同時に大国の妬みを買う事は予想されていた。
安価で高性能な電化製品や機械、原子レベルの半導体などが次々に開発され、
世界の市場に流通していったのだ。
他国の製品とは比較にならないほど安価で高性能な商品群は、貧しい国々にまで行きわたり、世界は日本無しでは成り立たないとまで言われた。
その経済発展を押し上げたのが日本のAIだった。
スーパーコンピューターの京をベースに、進化した日本人たちがさらに性能をアップさせた演算器を使い、そのAIは、あらゆる産業の特許や既得権益に抵触しないような商品の開発を行った。
自国の産業が日本に席巻され、各国は関税を値上げするなどの対策を講じたが、それでも日本ブームは収まらず、通貨機軸から日本を外す動きが見られ始めた。
実際は戦争が始まる前から、好景気に沸いた日本国中の民が他の価値に投資していくのがブームになっていた。
例にもれず久志も資産(殆どが賠償金)の大半を仮想通貨で持っていた。
日本のAIは独自の防衛システムも構築した。
それは日本のメインAI 通称「紫陽花の君」を補佐するAI達だ。
物理的防衛:自律衛星防衛網システム
進化後の日本が半年で構築した「1000基の高高度自律衛星」
による常時監視&迎撃システム。
通称:八咫烏 人称は「彼」
領空侵犯、ミサイル発射、海上接近、電磁波攻撃などをリアルタイムで感知。
一基あたり、時速1000kmで接近するミサイルを0.0000001ミリ単位で迎撃可能。
衛星同士が連携し、擬似的な“思考”を持つ防衛ネットワークを構築。
外敵の侵入は原理的に「不可能」に近い。
核兵器・EMPも対策済。電子遮断にも自律復旧機能あり。
また、テラワット級のレーザー兵器を装備。
それ故に、地上に兵士や基地は必要なく、戦後の今も空からの絶対的な防衛が常時機能している。
サイバー防衛:量子脳ネットワークシステム
人間とAIによる脳神経型クラウド思考ネットワーク。
通称:天照 人称は「彼女」
政治・経済・軍事に関する攻撃を、人間の直感とAIの演算で先読みして遮断。
自国へのサイバー攻撃は1秒以内に逆探知・封鎖され、起点国家に警告が送られる。
仮想空間・情報領域において、日本はほぼ「無敵」である。
他国が「見えない敵」として恐れる対象になっている。
それでも進入してくる敵もいる。
人的防衛:進化型防衛民兵
各地域のコミュニティで自主的に訓練されている民間の自衛組織。
田嶋久志もかつて此処に属していた。(久志の所属部隊名は陸712 通称モズ)
IQ150以上、反応速度・筋力共に通常の兵士を圧倒。
今や戦闘よりも、「境界の平穏を維持する精神の在り方」を訓練されており、
実際に戦うことは稀だが、戦時中は前線へどんどん投入された。
■ 戦争が止まっている理由
1. 世界の内部崩壊と反省
日本侵攻に関与した各国は、異常な科学技術・生物兵器の乱用により各国内も深刻な打撃を受けた。
生物兵器が暴走し、被害が自国内に及んだ国も複数ある。
また、日本に対する極端な暴力が世界中で報道されたことで、**世界的な市民の反発(アンチ戦争デモ)**が起き、各国政府が政策転換せざるを得なかった。
故に日本に対して、現在は「攻めることは倫理的にも政治的にも不可能」となった。
2. “恐怖”と“神格化”の共存
世界は、日本をもはや「国家」ではなく「別種の存在」として見るようになった。
特に進化した日本人の無駄のない行動・感情のコントロール・異常な頭脳に対して、恐怖と同時に“畏敬”の念を抱いている。
一部の国では日本人を「次なる進化の神」として信仰するような新興宗教も生まれている。
「日本に触れるな」という国際的タブーすら生まれつつある。
故に日本に手を出すこと自体が、“不吉”とされている。
3. 日本側の“無干渉姿勢”が信頼を生んだ
日本は、戦後一切の復讐や報復をしていない。
進化しても他国への侵略・技術輸出・情報流出を一切行わない「静かな独立」を貫いている。
それが逆に、「日本は安全である」という信頼と緊張の均衡を生み出している。
これは、日本人の倫理進化によって成立している奇跡的な状態。
つまりは“手を出されないためには、手を出さない”という、高度なバランス外交。
しかし、紫陽花の君が囚われてしまった今、またそのバランスが崩れつつあった。
永遠の存在から「限りある者」へ転生したいと願ったばかりに。
微かにまた聞こえ始める。
耳鳴りのようなノイズが。
久志はゆっくりと立ち上がり、南東の方角を見据えた。
久志の旅は続く。
設定考えるの、めっちゃ楽しい・・・




