表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/32

活躍するおっさん

久志は、浜辺の最も広い場所へ到達した。

わずかに街灯があるだけの暗い浜へアンドロイドが押し寄せ、潮風が砂を巻き上る。

アンドロイドの顔の赤いランプが無数のホタルの様に(うごめ)いている。

彼の隣にはローズが立ち、身構えていた。

「ローズ、時間を稼いでくれ!」

声を張り上げ久志は短く言い放つ。

「わかった。どれくらい? そう長くはもたない!」

そう言いながら飛び掛かってきたアンドロイドを回し蹴りで蹴り飛ばす。

「2分だ」

「何する気?」

「説明は後だ。」

とにかく久志を信じるしかない。ローズは目を細めると、無言で頷いた。

迫り来る無数のアンドロイド――彼女は鋭い視線を光らせ、両手両足をしなやかに伸ばす。

ローズの体術は、まるで弾むような柔軟さでアンドロイドたちを翻弄し、次々と押し返す。

鋭い蹴りと手刀が次々に敵の接合部を断ち切り、久志へ迫る機械兵を一体たりとも近づけさせない。


一方、村の方角では、美幸がテーブルの上に伏せていた。

巨大なバレットM82対戦車ライフル――赤外線スコープの先には、久志とローズの姿があった。久志に飛び掛かろうとするアンドロイドを美幸の弾丸が吹き飛ばす。

「田嶋さん、何する気だい・・・?」

そうして呟くように言うと、また美幸は狙いを定める。

彼女は眉一つ動かす事無く引き金を絞る。

夜空を裂く轟音とともに、鉛の弾丸がアンドロイドの頭部を貫く。

久志たちに群がる機械兵の列に穴を穿ち、次々と援護射撃を繰り出していく。


久志は錫杖をゆっくりと両手で持ち、目の前で構え直す。

無数のアンドロイドが集まり、鋭い赤い光の眼が蠢いている。

潮風が止んだように感じられる瞬間。

久志は錫杖の先端を地面に“トン”と置いた。

その瞬間、静かに足元に淡い光が瞬く。

砂を照らす光が輪を描き、広がりながら複雑な魔法陣を描く。

直径は百メートルくらいか――その光が夜の暗がりを昼のように明るく照らす。

魔法陣の上に乗ったアンドロイドたちは、光に呑まれるように動きを止めた。

メタリックの装甲がひび割れ、内部の機構がむき出しになってゆく。

アンドロイドたちは砂の粒子のように音もなく崩れ落ちていった。

ローズが驚いたように目をぱちくりさせている。

「こいつらが湧きだしてる媒体があるはずだ」

久志はそう言って地面につけた錫杖に耳を当てる。

「こっちだな・・・」

そうして岸壁のほうに向かって走り出した。ローズも後に続く

「ここだな」

あの古い祠だった。

夜の静寂を裂くように、その祠の奥から微かな光が脈打つ。

祠の中から砂のような塵が排出されている、まるで水が湧きだすように。

音もなく砂に似た微粒子は瞬く間にアンドロイドとなって構築されていく、白い仮面のような無機質な顔を現す。

一体、また一体――祠は底知れぬ泉のように、無限にアンドロイドを吐き出し続けていた。

「どういう事 これ!?」

「説明は後、とにかくこいつをどうにかしよう!」

そして湧き出たアンドロイドはすぐに襲い掛かって来る。

「ローズ、またちょっと時間稼いで!」

ローズは湧き出た瞬間にアンドロイドを蹴り飛ばしていく。

久志は祠の根元に錫杖を突き刺し、目を閉じた。

そこは膨大な量のデータが集積されいるデータベースがあった。

そして無数のネット回線が構築されている。

久志は錫杖を介しネットの深海の中にダイブしている。

いくつもの扉を開け、何かを探している。

そして一つの扉を開けた時、その部屋の奥へと続く赤いワイヤーを発見した。

ドクドクと波打ち、こちら側に何かが送られてきているようだ。

「見つけた」

久志は現実世界に戻り、錫杖をさらに奥深く差し込み、力を込める。

「うおおおおおおおおおお!!」

ネットの中の錫杖から1本の青いワイヤーが伸びていき、赤いワイヤーに繋がってゆく。

そして、久志がエネルギーを送ると、青い光が赤いワイヤーを逆流し、赤いワイヤーが紫色になった。

耐えきれなくなったのか、バチバチと火花が散り、ジュッと煙が上がり、線は黒焦げになった。

その瞬間、そこら中にいたアンドロイドもバタバタと倒れていき、村に侵入していたアンドロイド達も次々に制御を無くし、バタバタと倒れ、砂の様に消滅していった。

「ふー 終わった・・・」


一方、泰也達の周りのアンドロイド達も消滅していった。

「終わったか? 準備運動にもなりゃしねえ!」と泰也が得意げに言った瞬間、ピンク色の閃光が走り、美幸の寝そべっている場所すれすれを横切り、旅館の一室を両断した。。

「!!?」

光の出た方向を見ると、そこには黒いトレンチコートを着て黒いボルサリーノをかぶった大男が

立っていた。

口から射出口が見えており、わずかに煙が出ていた。

大男は美幸のいる窓に向かって爆風の様に踏み込んだ。

泰也が気づいた時、美幸は大男に首をつかまれネックハンギングのような状態になっていた。

美幸は抵抗しているが大男はまるで意に介さず、無表情で首を絞める。

その瞬間大男の腹に強烈な衝撃が走った。

目にもとまらぬ速さの踏み込みにより速度が乗った泰也の蹴りは、美幸を拘束から解かす事は

容易であった。

泰也に蹴られ、壁にめり込んだ大男は美幸をぽとりと落とした。

美幸はせき込み、胃液を大量に吐いた。

「うえーーーっほ!! はあはあ・・・」

「ばあちゃん!」

泰也は大男に向きなおり、強烈な膝蹴りを大男の顔面にぶちこんだ。

大男の皮膚がずるりとめくれ、機械の顔が露出した。

泰也は第二、第三撃を連続したが、第四撃目で足首をつかまれた。

「くっ!」

大男は泰也を持ったまま泰也を振り回し、旅館の壁や、木、柱などに泰也を叩きつける。

ドンッ!! と音がすると、泰也は急に解放された。

切断された大男の腕は泰也の足首をまだしっかりと握っていた。

するとそこには金髪の青い目をしたローズが立っていた。

「大丈夫? 泰也!?」

「お おお これくらいなんて事ないが!」

「よかった!」と言って泰也ににっこり微笑んだ。

「ら、楽勝だぜ」泰也は耳たぶを赤くして答えた。

すると「おい!クソガキ、照れてないであのデカブツが復活してきてるよ!」と美幸が言った。

「あいつのコアは胸の中、それを壊せば動きが止まる、でも分厚い鉄板で守られてる。私が動きを止める、泰也はコアの鉄板をはがしてコアを破壊して!」

「よしっ わかった」

そういってローズは素早く大男の後ろに回り込み、羽交い絞めの格好になった。

両手、両足をイカの足の様に絡ませ、動きを封じる。

「今よ!」

泰也はすかさず男の胸部分の左右に折り畳まれている鉄板を両手でこじ開ける。

「うおおおおおおおおおおおおお!」

その時、泰也の足にしがみついている腕から配線が伸びていき。むき出しになった旅館の柱に

巻きついていく。

泰也は片足を後ろに引っ張られながら胸をこじ開けるのを止めない。

大男は砲口を泰也に向け、ビーム砲を発射しようとエネルギーを充填している。

「早く!!馬鹿力が・・・腕が千切れそう・・・」ローズが叫ぶ。

ビームが発射される直前、泰也は頭突きを食らわし、ビームは明後日の方向へ飛んで行った。

「ぬおおおおおおおおおりゃあああ」

そしてついに胸の鉄板がはがされ、紫色のコアがむき出しになった瞬間、大男の拘束が解かれた。ローズの力が限界に来てしまったのだ。

「しまった!!」

その時、ズドンッ!という音がして、大男のコアに丸い穴が開いていた。

「ばあちゃん!」

カラ―ン・・・薬きょうが転がる。

美幸のライフルの弾丸が、大男のコアを貫き、大男は動きを止めた。








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ