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婚約者を庇って呪いで猫になりました~なかなか快適な猫ライフです~  作者: 燈華
番外編

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お見合いをします。3

四阿(あずまや)の周辺には色も種類も豊富な薔薇が植えられ、お互いを引き立て合いながら咲き誇っていた。

四阿の柱は白く、細かな彫刻を施されている。

そんな四阿には蔓薔薇が這わせてあって絵本の中に迷い込んだかのような光景だった。


「綺麗……」


思わず呟く。


「気に入ってもらえたかな?」

「はい。まるで絵本の世界のようで……」

「絵本?」


不思議そうな声で言われてはっと我に返る。

やってしまった。


素で答えてしまった。

淑女はそのような言い方はしないだろう。

それに、きっと失礼な表現だっただろう。


「失礼しました」


内心で慌てつつ表面上は冷静に謝罪したリラージュにゼリア侯爵令息はきょとんとした。

その反応にリラージュもきょとんとする。


二人できょとんとしたまま見つめ合うことしばし。

不意にゼリア侯爵令息が吹き出すように微笑(わら)った。


「とりあえず座ろうか。それからゆっくり聞かせて」

「はい」


エスコートされて四阿の中の椅子に座る。


すすっと何人もの侍女が現れてあっという間にテーブルには何種類ものお茶菓子が置かれ、香り高い紅茶が目の前に饗された。

侍女たちは静かに下がっていき、四阿から距離を取って控える。

その中にララと付いて回っていたゼリア侯爵令息の従者も入っていた。


「どうぞ」

「ありがとうございます。いただきます」


促されたのでティーカップを持って口をつける。

馥郁(ふくいく)とした香りが鼻を抜ける。

ほぅっと息をついた。


「美味しいです」

「それはよかった」


ゼリア侯爵令息もほっとしたようだ。

さすがに見合い相手に緊張しているのだろうか?

うん、きっとそうだろう。


「お茶菓子のほうもどうぞ」

「ありがとうございます。いただきます」


そう応じたがお茶菓子はいろいろあって目移りしてしまう。

マカロンが一番好きだけど、お菓子は全般的に大好きだ。


そんな様子をゼリア侯爵令息はどこか楽しそうに見ている。

それに気づいたリラージュは言い訳するように言う。


「どれも美味しそうで迷ってしまいます」

「マカロンがお薦めだよ。グーリエ嬢が好きだと言っていたと伝えたら張り切って作っていたからよかったら食べてあげてくれないかな?」

「そういうことでしたら」


ゼリア侯爵令息が手ずから色とりどりのマカロンを皿に盛ってリラージュの前に置いてくれる。


「ありがとうございます」

「どういたしまして。どうぞ。よかったら味の感想を聞かせてくれる?」

「はい」


リラージュはゆっくりとした動作でマカロンを手に取り、一口齧る。


軽い歯触り。

中には甘酸っぱいクリームが挟まれている。


思わずふわりと微笑()みが浮かぶ。


「どうかな?」


笑みを含んだ声で訊かれて、リラージュは一つきちんと食べ終えてから答える。


「美味しかったです。これは、ラズベリーのクリームが挟まっているのでしょうか? 甘酸っぱいけど舌に残るほどではなくてとても美味しいです」

「しまった。きちんとどれがどの味か聞いておくべきだった」


その言い方に思わず微笑(わら)ってしまった。

慌てて淑女の微笑みに戻す。


ゼリア侯爵令息にはばっちりと見られていた。

だけど彼は微笑(わら)うだけで言及はしなかった。

流してくれるということだろう。


「ごめん、グーリエ嬢。せっかく味の感想を言ってくれたのに」

「いいえ、気になさらないでください。お菓子は美味しいですから」

「ありがとう。僕はうまく答えられないけど、いろいろ感想を聞かせてくれると嬉しい」


それならお菓子について質問するのはやめよう。


「わかりました」


とりあえずは皿に盛られたマカロンだ。

マカロンを食べている間にも他のお茶菓子をお皿に盛ってリラージュの前に置いてくれる。


頬が緩んでしまいそうになるのを堪えつつ、有り難くいただいた。

そして思いつくままに感想を伝える。

それをゼリア侯爵令息は笑顔で頷きながら聞いてくれた。


「グーリエ嬢の感想は厨房にしっかりと伝えておくよ」


リラージュは微笑した。


「はい。素人の感想でお恥ずかしいですが」

「大丈夫。食べる側の感想は貴重だと言っていたよ」


それなら安心だ。たぶん変なことは言っていない。

ほっとしてティーカップを持ち上げ、紅茶を飲む。

それにゼリア侯爵令息は目を留めた。


「先日のお茶会でも思ったけど、所作が綺麗だね」

「ありがとうございます」


リラージュは淑女の微笑みを浮かべて言葉少なに礼を言う。

所作はルーティスにかなり鍛えられたから自信がある。

だけどそれを表に出すのははしたない。

だけどバレているような気もする。


「いいことだね。その所作ならどこに行っても通用すると思うよ」

「ありがとうございます」


侯爵令息である彼に認められたのなら大丈夫だろう。

それにほっとしていたから彼が呟いた言葉は聞き逃していた。


「侯爵家に嫁ぐことになっても問題ないね」


読んでいただき、ありがとうございました。

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