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今後について話し合うそうです。

「今後の話し合いをよろしいでしょうか?」

「ああ、もちろん」


ゼリア侯爵が頷き、夫妻とフィアニカがフェラルードの近くに寄った。

三人とも対外的な顔をしている。

真面目な話だからだろう。


リラージュもフェラルードの腕の中できりりとした顔をしてみる。

ゼリア侯爵夫妻とフィアニカから変な声が聞こえた気がしたが気のせいだろう。

フェラルードも表情を変えていないし。


「それで呪いが解けるまでうちにいてもらおうと思うのですが、構わないですよね?」

「ああ、勿論構わない」

「リラが猫になってしまったのはうちにも責任があるわ。その身の保護は当然のことだわ」

「むしろここで放り出していたらお兄様を軽蔑するところでしたわ」


快く了解してくれて有り難い。


「にゃーにゃー。にゃーにゃー(ありがとうございます。お世話になります)」


ぺこりと頭を下げる。

ララも一緒に頭を下げてくれる。


また変な声が聞こえた気がする。

リラージュは顔を上げた。


誰の表情にも変化はない。

やはり気のせいだったのだろう。


ゼリア侯爵が咳払いをしてからリラージュに声をかける。


「息子のためにすまんな」

「ええ本当に。呪いが解けるまで自宅だと思ってくつろいでちょうだい」

「ここではお寂しいでしょう? 屋敷内は自由に動いてくださいましね」


フィアニカの言葉にフェラルードが待ったをかける。


「いや。リラはこの部屋から出さない。知っている者は最低限にしておいたほうがいい」

「それはそうだな。だが、後でファトとフーリィには伝える。構わないな?」


ファトは家令の、フーリィは侍女長の名前だ。


「あの二人には伝えないと駄目でしょう。偽装もしてもらわなければなりませんし」


ふとフィアニカは気づいたようだ。


「体調を崩したことにするのであれば、ここではなく客室にすべきではないのですか?」

「何があるかわからないからなるべく傍にいたいんだ」


しれっと言ったフェラルードに家族は胡乱(うろん)な目を向ける。

そんな家族の視線を受けてもフェラルードは平然としている。


「リラはそれでいいのかしら?」


息子に言っても(らち)が明かないと判断したゼリア侯爵夫人はリラージュに矛先を向けた。


「にゃー。にゃーにゃーにゃー(はい。フェルの意見にも一理あると思うので)」

「……そう。まあ、何かあったら遠慮なく言ってちょうだい」

「にゃー(はい)!」


言葉は通じないだろうけれど、そう心を配ってくれるのは単純に嬉しい。


お礼のつもりでゆったりと尻尾を振る。

三人はぷるぷると震え出す。


どうしたのかしら? と首を傾げる。


「リラ、放っておいていいよ」

「にゃん?」


リラージュは反対側に首を傾けた。


「気にしなくていい」


本当に?

リラージュはさらに反対側に首を傾けた。

こほんこほんとゼリア侯爵が咳払いをする。


「さて、我々は一度退散するとしよう」

「そうね」

「はい。お義姉様、また後で来ますね」

「にゃー(うん)!」


尻尾をふりふりして見送りの挨拶にした。


「か、可愛い」

「可愛すぎます」


ゼリア侯爵夫人とフィアニカが堪えきれないというように口許を手で覆う。

ゼリア侯爵は不自然に咳払いをしてフェラルードに視線を固定する。


「後でファトとフーリィを寄越す。必要なものは二人に伝えろ」

「わかりました」


答えるフェラルードの視線はどこまでも冷ややかだ。


「それじゃあリラ、失礼するよ」

「フェルに何かされたら遠慮なく言ってちょうだい」

「我慢する必要はありませんからね。それではまた後で」


三人は足早に部屋を出ていった。

やはり忙しい中を来てくれていたのだろう。

有り難いと上機嫌で尻尾を振るリラージュは三人を見送るフェラルードの呆れた視線には気づかなかった。


読んでいただき、ありがとうございました。

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