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婚約者を庇って呪いで猫になりました~なかなか快適な猫ライフです~  作者: 燈華
番外編

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王太子の婚約者と側近決めのお茶会の帰りの馬車の中のこと。


リラージュはうとうととしかけてはっとして目を(こす)る。


「姉上、疲れたでしょ? 寝ていていいよ。着いたら起こしてあげる」

「でも……」

「リラ、寝たらいいわ。私たちは気にしないから」

「うん……」

「姉上寄りかかっていいよ」

「大丈夫……」


リラージュは壁に寄りかかって目を閉じた。

すぐにすぅっと寝息が聞こえてきた。


ルーティスは手を伸ばしてリラージュを自分のほうに引き寄せた。

頭を膝に乗せてやる。


その頭を撫でながら向かいに座るアンドレアに視線を向けた。

リラージュが寝てしまえば色々と話すのに都合がよかった。


「殿下の婚約者はもう決まりだね」

「ええ。もともと公爵令嬢の誰かという話だったもの。順当だわ」

「そうだね」


公爵令嬢は三人参加していた。

そのうちの一人、ソフィア・ルーラン公爵令嬢で決まりだろう。


なにせ甘い雰囲気を漂わせていた。

彼女を見る王太子殿下の視線の優しく甘いこと。

紅茶も甘ったるく感じたほどだ。


その中でリラージュだけはいつも通りだったが。

さすがの大らかさだった。

むしろ間違いなくお菓子を満喫していた。


「姉上がニキビの話を引き出した時はどうしようかと思ったけど」

「結果的にはよかったわね」


リラージュですらまずいと思って顔を青くしていた。

アンドレアもその話題を拾い上げる王太子殿下のことを思わず諌めようとしてしまったくらいだ。


だが蓋を開けてみれば、それが却ってよかったのだ。

あれが決定打だったのかもしれない。

どの公爵家の令嬢が選ばれても問題はなかったのだから。


すっとルーティスの表情が険しくなる。


「姉上を鋭い視線で見ている令嬢がいた」

「私、彼女を知っているわ。モルン公爵令嬢よ」

「公爵令嬢か。そうしたら今回のことで恨んでもおかしくはないか」

「自分こそが、と思っていればそうね。リラがきっかけというのは注意深く見ていたらわかるもの」

「ルーラン公爵令嬢が同じテーブルにいたからね。ライバルの動向をチェックしていて、か」

「そうだと思うわ」


二人して眉間に皺が寄る。

ルーティスが手を伸ばしてアンドレアの皺を伸ばす。


「皺になるよ」

「ルティもね」


ぐいぐいと伸ばされる前に眉間を緩める。

あまり身体を動かすとリラージュが起きてしまうかもしれない。


そっとリラージュを窺うが、静かな寝息を立てて眠っている。

ほっとする。


それにしても余程疲れたようだ。

きっと緊張のせいだろう。


普段図太いくらい大らかなリラージュも王宮での、それも王太子の婚約者を決めるお茶会というのはさすがに緊張しただろうから。


リラージュの頭をそっと撫でながら呟くようにルーティスは言う。


「姉上の安全は図らないと」

「そうね。それは絶対だわ」


それだけは、絶対だ。


「姉上にもしっかりと言っておかないと」

「そうね。リラ自身がしっかりと自分を守れるようにしないと」


傍にいれば守れるが、一人で呼び出されたりしてしまうと難しい。

一人で呼び出される可能性はあるので尚更しっかりと言い聞かせておかなければ。

それは起きた時に重々言い聞かせることにする。

あとはできるだけの手を打っておかなければ。


二人で頷き合う。

ルーティスは表情を緩めて告げる。


「じゃあ、帰ったら父上に話して婚約を打診してもらうね」

「ええ。両親には言っておくわ」


万が一アンドレアが王太子の婚約者に選ばれた時のために婚約はしていなかった。

ルーティスとアンドレアの婚約については反対はされていなかったのだが、家のため、僅かな可能性のために正式な婚約はされていなかったのだ。


だけどこれで正式に婚約できる。

一刻も早く結んでしまわなければ。


王太子の婚約者が決まれば今まで婚約を結んでいなかった家が一斉に動き出すだろう。

目端が利く家ならもう動き出しているはずだ。

横槍を入れられる前に婚約を結んでしまいたい。


アンドレアが王太子の婚約者に選ばれなければ正式に婚約を結ぶ旨は双方とも当主同士で話がついているので正式に打診すれば問題なく結ばれるだろう。

だからルーティスとアンドレアの婚約については問題ない。

問題なのは……。


ルーティスとアンドレアの視線がリラージュに落ちる。


「……ねぇ、どう思った?」


詳細を言わずともアンドレアにはしっかりと伝わる。


「そうね。まだ気になっている、ってところじゃないかしら?」

「なら、今なら間に合う?」

「わからないわ」


二人で難しい顔で黙り込む。

しばし馬車の車輪の音とリラージュの静かな寝息だけが馬車の中に響いた。


「とにかく、できるだけの手は打ってみるよ」

「ええ。私も協力するわ」

「心強いよ」


やはりルーティスが結婚するならアンドレアしかいない。

その気持ちを新たにした。

やはり帰ったらすぐに打診してもらうことにしよう。


「一緒にリラを守りましょうね」

「うん」


二人でリラージュを見下ろして誓う。






ルーティスとアンドレアの話し合いも心配も知らずにリラージュは静かに眠っていた。


読んでいただき、ありがとうございました。

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