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義家族が会いに来てくれました。

扉がノックされてから開けられる。 


「リラ、お待たせ」


入ってきたのはもちろんフェラルードだ。


「返事が返ってきてから開けなさい」


フェラルードを叱りながら入ってきたのはゼリア侯爵夫人だ。


「お兄様、小さい子供のようですわ」


呆れたように言って入ってきたのはフェラルードの妹のフィアニカだった。

フィアニカは今日は出掛けていたはずだったのだが帰ってきていたようだ。

だが帰ってきたばかりのようで外出着のままだ。

話を聞いて着替えることなく来てくれたようだ。


「リラ、失礼するよ」


一言断って入室してきたのはフェラルードとフィアニカの父親であるゼリア侯爵だ。

今日は邸内で領主としての仕事をしていると聞いていた。

わざわざ仕事を中断して来てくれたようだ。


その後からフリオと侍女が二人入ってくる。

彼女たちはリラージュがこの屋敷に来た時についてくれる侍女だ。

名前はフィフィとファラ。

彼女たちにも事情を説明しておいたほうがいいと判断したのだろう。

共に信頼に足る侍女だ。


きちんと扉が閉められる。

苦言はあっさりと聞き流してフェラルードはリラージュのもとに来るとその身を抱き上げた。


「さっき説明した通り、リラがこの姿になった」


リラージュは抱き上げられたままみんなを見回す。


「か、可愛いわ」

「こんな時に不謹慎かもしれませんけど、可愛らし過ぎますわ」


ゼリア侯爵夫人とフィアニカが口々に言う。

侍女二人は口許を手で覆い、ぶんぶんと首を縦に振っている。

ゼリア侯爵はじっと凝視しているようだ。


「にゃん」


リラージュはゆったりと尻尾を振る。


「リラ、そんなサービスはいいから」


リラージュはフェラルードを見上げてきょとんとする。

言っている意味がわからない。

フェラルードは溜め息をつく。


「リラはそうやって無意識に愛嬌を振り撒いて周りを魅了するんだから」


リラージュは首を傾げた。


「可愛い、本当に可愛いわ」


その声にリラージュは視線をゼリア侯爵夫人たちのほうに戻した。


ゼリア侯爵夫人とフィアニカは手に手を取り合っている。

侍女二人は両手を組んで(うずくま)っている。

ゼリア侯爵はリラージュを凝視したまま微動だにしない。

フリオだけは変わりなく見えるが、よく見ると視線が泳いでいる。


カオスだ。

何でそんなことになったのだろう?

リラージュは首を傾げた。


フェラルードがリラージュの頭を撫でて溜め息をつく。

リラージュは呑気な表情で頭を撫でられている。

その姿もまた可愛らしいものだ。

みんなの頬が緩むのが止まらない。


そこへ。


「そろそろ落ち着いたら?」


冷ややかなフェラルードの声が響いた。

効果は絶大だった。


ゼリア侯爵夫人とフィアニカはお互いの手を離して優雅な立ち姿を見せた。

侍女二人はすっと立ち上がり壁際に控えた。

ゼリア侯爵の立ち姿も紳士然として穏やかな表情を浮かべている。

フリオは何事もなかった顔でフェラルードの後ろに控える。


その見事な変わりっぷりにリラージュは目を丸くする。


「今後の話し合いをよろしいでしょうか?」


まだ冷ややかさを残した声でフェラルードが訊いた。



読んでいただき、ありがとうございました。

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