言い争いは誰にも止められません。
「何のために泣く泣く預けたと思っているんだろうね?」
冷ややかなルーティスの声が部屋に響いた。
室内には重苦しい空気が漂っている。
手分けして室内は勿論、庭の方も探してみたがリラージュの姿はなかった。
つまりリラージュはどこかに行ってしまったのだ。
どこに行ってしまったのか?
何故いなくなってしまったのか?
話し合ってもわからない。
そこへリラージュに会いにルーティスが来たのだ。
そして話を聞いて言い放ったのが冒頭の言葉だ。
ルーティスはさらに冷ややかに続ける。
「リボンを外して逃げ出すなんて姉上はよっぽどここにいるのが嫌だったんだろうね」
言いにくいことだがここはしっかりと言っておくべきことだろう。
おずおずと口を挟む。
「ルーティス様、大変申し上げにくいのですが、リラ様は猫生活を大変満喫しておりました」
思わず頷いたのはフェラルードとファラとフィフィだ。
リラージュと共にいた彼らはリラージュの猫生活をよく知っていた。
少し室内の空気が緩む。
「姉上はいつでも何でも楽しめちゃうからね」
ルーティスは苦笑いする。
その通りなのだ。
リラージュはいつだって前向きだ。
どんなことの中からでも楽しみを見出して楽しんでいる。
だからこそリラージュが姿を消した理由がわからないのだ。
話し合ってもそれらしい理由は出てこなかった。
「だったら別の何か理由があるはずだよね?」
ルーティスの言葉が緩みかけた空気を引き締めた。
鋭い視線はフェラルードに向けられる。
原因はお前だろうと断定しているようだ。
「……リラが何でいなくなってしまったのかはわからないよ」
「姉上に何をしたのか、今のうちに言ってもらいたいね」
もうフェラルードが何かしたのだと確信しているようだ。
「……ちょっと喧嘩しただけだよ」
ルーティスの片眉が上がる。
「喧嘩? 姉上と?」
口許に温度のない笑みが浮かぶ。
そしてルーティスはゆっくりと腕を組んだ。
「何で喧嘩になったのさ」
「ルーティスには関係ないよ」
「ふーん、僕に言えないようなことか」
ルーティスが低く呟く。
部屋の気温が下がったような、気がした。
「つまり僕に知られると姉上を連れて帰られて婚約解消が視野に入ってくるようなこと、ということだね?」
「お互いにちょっといらいらしていただけだよ」
「姉上が? あり得ない」
リラージュは怒ることはあってもいらいらしているところは見たことがない。
ララたちより付き合いの長いルーティスはそれをよりよく知っている。
だからこそ、あり得ない、と言っている。
「どうせお前が一方的にいらいらして姉上に当たったんだろう?」
「好きに思っているといいよ」
冷ややかな視線と冷めた視線がぶつかり合う。
ララたちにはこの応酬を止めることはできない。
はらはらしながらそれを見ているしかない。
次なる応酬がそれぞれの口から出そうなまさにその時ーー
リラージュが帰ってくればわかるようにと開け放してあった窓から紅い小鳥が室内に入ってきた。
「え? 鳥?」
ルーティスの言葉が皆の心を代弁していた。
皆が動きを止めて小鳥を見てしまう。
くるくると天井付近を旋回した小鳥がすいっと下りてきてフェラルードの前で羽ばたいて浮いている。
フェラルードが捕まえるとその小鳥は手の中で巻いた紙に変化した。
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