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第6話 もう少し、だっこで。
クラス替えがあった春。まだ新しい環境に慣れないプリンセスは、保育園のお部屋まで「だっこ」で行くのが日課になった。
昨年は、もう自分で歩いていたのに。保育園の玄関で靴を履きかえて、ちいさなリュックを背負って、手をつないで歩いて行った姿を思い出す。
あの手も、いずれは離れていくんだな、なんて考えたのも、そんなに前のことじゃない。
そして今、またパパの腕の中に戻ってきたプリンセス。
「ちょっとさみしいのかな」「ちょっと不安なのかな」…そう思いながらも、パパの心の中では、どこかうれしくてあたたかい気持ちが広がっていた。
「今度の“だっこ”は、いつまでかな」
そんなことを思いながら、プリンセスをしっかりと抱きしめて、保育園のドアをくぐった朝。