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第1話 たんぽぽとおじさん
春の午後、プリンセスとパパは河原をお散歩。まだ少し肌寒い風の中、足元に黄色いたんぽぽを見つけて、プリンセスがしゃがみ込む。
「かわいいねえ。たんぽぽさんだねえ」
しばらく歩くと、今度は綿毛になったたんぽぽが。ふわふわの丸い姿に、プリンセスの目がきらり。
「パパ、これなに?」
「それもたんぽぽだよ。飛んでく準備してるんだよ」
プリンセスはじーっと見つめた後、ひと言。
「じゃあこれは……たんぽぽのおじさんだね」
思わず笑ってしまうパパ。確かにちょっと白髪っぽい。
「さっきのは子どもで、これがおじさん。ふーってすると、おじさん、旅に出るの」
そう言って、プリンセスは「いってらっしゃーい!」と大きな声で綿毛を飛ばした。
おじさんたちは、風にのってどこか遠くへと旅立っていった。