表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/35

温もりとともに

 洞窟を出たら、晴れていた。

 入る前も晴れていたけど、その晴れがずっと続いていたのか、吹雪いてまた晴れたのか、それは分からないけど、晴れているなら好都合だ。


「じゃあ、今度こそ戻るよ」

「ええ」


 無事に氷の結晶を手に入れられた。色々あったから無事と言っていいのかどうかは分からないけど、結果的に無事だったんだから、それでいいんだろう。


 手を差し出すと、エイシアは小首を傾げてから少し笑う。そして、腕にしがみつくように手を回してきた。


 驚いた俺に、エイシアはなぜか得意そうに笑った。その笑みに、俺はまあいいかと思って、そのまま歩き出す。何かあってもすぐ剣を抜けないけど、魔物がいるわけじゃないし、大丈夫だろう。それに……。


「氷の結晶を手に入れてさ、実際どうなの?」

「明らかに強くなってるわ。今なら"雪の屋根"があっても、すぐにそうと気付けそうよ。吹雪になっても、問題なく歩けそうな気がするわ」

「それはすごいけど、吹雪の時はやめようよ」


 つまり、ある程度地形を把握できるということだろう。まだ分からないけど、この感じなら魔物がいても、俺より先に察することができるんじゃないだろうか。

 でもまあ、吹雪の中の移動は勘弁だ。体温が軒並み奪われるから。歩けるからいいという問題でもない。


「あのさ、内側に入れておくって、具体的にどういうこと?」


 クルスタロスと話しているときにも疑問に思ったけど、あの時はエイシアは分かっている様子だったから、口出しはしなかった。でも、俺の目には氷の結晶が、ただ消えたようにしか見えなかった。


「具体的にと言われても難しいわね。体の内側に仕舞っておく、としか表現できないわ。あんなの手に持って歩いたって、邪魔だし」

「邪魔って……」


 その言い様に苦笑すると、エイシアが右手を伸ばした。その上に、あの場所で見た氷の花が現れた。


「ちょ、ちょっとエイシア、体に負担があるって……!」

「出しただけよ。力を使わなければ、何も問題ないわ」


 驚いて慌てる俺を余所に、エイシアは笑う。


「これで、本当の意味で、どこまででも一緒に行けるわ。だから覚悟なさい、シリウス」

「――うん、エイシア。俺の方こそ、よろしく」


 最初に旅立つとき、俺は迷うことなく北へと進路を取った。エイシアの氷の魔法は、暑い地域に行くと威力が落ちる。だから、俺は北へ進むことを迷わなかった。


 でも、元々旅に出たいと思ったのは、母のいた国を見たかったからだ。そして、母のいた国は、高確率で南の国だ。母から聞いたことはなかったけど、色々な人の話を聞くとその結論にたどり着く。


 それでも北へと向かった俺に、きっとエイシアは悔しい思いをしてたんだと思う。それでも黙っていたのは、自分の力が落ちることを知っていたからだ。


 だから、氷の結晶を手に入れたいと願ったのは、俺のためだ。俺が行きたい場所へ気兼ねせずに行けるように、あんなにも必死になって、手に入れてくれたのだ。


 エイシアが笑顔で俺の顔をのぞき込んできた。


「頼りにしてるわ、赤の魔剣士様」

「……エイシアまでそれを言わないでくれないかなぁ」


 もうすっかり忘れていた二つ名を、まさかのエイシアの口から出されて、俺はゲンナリする。


「何を言ってるの。どうせまた、そう呼ばれるわよ。いい加減慣れなさい」

「精一杯努力させて頂きますよ、銀の雪姫様」


 嫌だと思いつつも、エイシアの言う通りだよなと思うとウンザリする。投げやりに言えば、エイシアが二カッと笑った。やっぱり、その呼び方を気に入っているらしいのが、羨ましい。


「ほら、さっさと行くわよ」

「分かってるよ」


 ため息をついていると、エイシアに腕を引かれた。


 これから行く場所はどんな場所なんだろうか。母のいた国は、どんな国なんだろうか。不安もあるけど、エイシアと一緒にいれば、きっと何も問題ない。


 今までになく、近い距離のエイシアの温もりが、どこかくすぐったい。この温もりとともに、俺はこれからも歩いていく。


正真正銘、これで終わります。

これ以上書こうと思ったら、世界地図書いて、設定を色々ちゃんとしないと書けないので(汗)。

お読み頂きまして、ありがとうございました!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 遅くなりましたが、完結おめでとうございます! これは続編もいける?と思ったら本当に完結でした。でもシリウスとエイシアの凸凹最強カップルの活躍をたっぷり読むことができて、楽しかったです! […
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ