第二話「信頼関係は決してない」①
「えーっと、
職員室ってどっちだっけ?」
「全っ然頼もしくない教師だな!」
私はついつっこんでしまっていた。
幽霊専門の教師と女学生の幽霊。
廃校になる東中学校で「楽しい学校生活」を送る。
私が成仏する為に。
だが…
「教材全部そっちなんだよね。連れてって。」
「大の大人が生徒に頼るな!」
犬猿の仲。
それでも制服の襟を掴まれたまま、強引にズルズルと引きずられる幽霊の私。
はっと気が付く。
「どうして普通の人間のお前なんかに従ってるんだ!」
ふと思い出したのは…
最初の出会い。
突如この教師に拘束され
気付けば自然と上下関係が出来上がっていた事。
(あの時は油断していただけだ。
私が本気を出せばきっとこいつを屈服できるはず…!)
屈服…
そう、今のうちにしっかりどちらが上か決めておかなくてはならない。
ばっと素早く動く、彼に力任せ殴りかかってみる。
ただの拳ではない。霊力というか、霊障というか、
とにかく邪なものを込めて繰り出すので
生身の人間は霊障にあてられるだろう。
バチイイン!
……?
あれ?
その音は拳の音ではなかった。
顔面には出席簿が殴打。
さも自然な所作で、彼は手に持つ出席簿をタイミングよく私の顔にめり込ませていた。