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彼女の気持ちを知り、自分の気持ちを自覚した。
お互いの気持ちが通じ合ったと、彼女の心からの笑顔に彼女の愛情を感じた時だった。
身体が燃えるように熱くなるのを感じた。
最初はそれを恥ずかしさや照れからくるそれだと思ったアレクシスだったが、すぐにそれだけではないと自覚する。
自分の身体からシューシューと蒸気が出てくる。
「シャロン王女!!離れて!!!!」
「―――え?」
アレクシスは、急いでシャロン王女を突き放すと彼女と距離を取る為、急いで後退る。
その時だった。
――――――――ボワン!!!!
「アレクシス様!!!?」
何かが破裂したような音と共にアレクシスの身体が煙幕で包まれた。
少し離れた位置から2人を見守っていた近衛と侍女が一斉に駆け出してくるのが分かる
「(—――嗚呼、やっと)」
不思議とこの時、アレクシスに焦燥感などはなく気持ちは凪いていた。
―――煙幕が消え視界が晴れると、そこには黒い濡羽の髪を靡かせた美丈夫が立っていた。
侍女に支えられながら崩れ落ちるように泣いてアレクシスを呼んでいたシャロン王女は、目を瞬かせる。
「・・・アレクシス様?」
「はい!シャロン王女殿下。どうやら貴女のおかげで呪いは解かれたようです!!」
呟くように呼ばれた声に、弾かれたような笑顔でそう答えたアレクシスにシャロン王女は急いで跳びついた。
「元に戻れたのですね!!よかっ・・・よかったです!!」
大粒の涙を流しながらぎゅうっと抱き着いてくる彼女を危な気なく抱き留めて困ったように笑ったアレクシスを、周りの近衛騎士たちも侍女も涙を浮かべて喜んだ。
“アレクシス王太子殿下の呪いが解けたぞー!!”
“急ぎ国王陛下、並びに王妃殿下にご報告を!!”
直ぐに慌ただしくなる周りを他所に、アレクシスはシャロン王女が落ち着くのを子どもをあやすように背中を擦って待った。
満開の花々が二人を優しく見守り、その華やかな香りが甘い二人を包む。
「・・・落ち着きました?」
「―――はい・・・ありがとうございます。」
恥ずかしそうに俯く彼女の顔を覗き込み、自分のハンカチで優しく涙をふくアレクシス。
そっと顔を上げ、アレクシスを見上げたシャロン王女は安心したように、微笑を浮かべた。
「よかった、容姿は変わってもアレクシス王太子殿下のその強い意志の灯った綺麗な瞳もお優しいお心も何も変わっていませんでしたわ。」
ウフフと笑ったシャロン王女にアレクシスはまた胸のときめきを覚える。
「もう“アレクシス様”と気軽には呼んでくれないのですか?」
自分ばかりがと、少し悔しくなって。
先程まで必死に呼ばれていたその心地良い響きをまた聞きたくなって。
悪戯にそう言ってみると、恥じらうシャロン王女と思った以上に距離が近い事を自覚した。
それはシャロン王女の一緒のようで急いで一斉に一定の距離を取る。
「だ、大胆なことを~~~っすみません!!」
「こ、こちらこそ、とんだ失礼を!!すみません」
2人でペコペコと頭を下げあう。
「「・・・っぷ!」」
それが面白くて二人で笑いあった。