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ラディリアスさまの、秘密の愛称……?

 皇太子であられるラディリアス殿下と

 お兄さまは、幼なじみにあたります。

 当然、お兄さまと双子である わたくしとも

 殿下は幼なじみ。

 

 ですから、時にお兄さまは

 ラディリアス殿下の事を『ラディリアス』と

 呼び捨てにする事があるのです。

 ……もちろん わたくしは

 そのような事は致しませんよ?

 

 これは、お兄さまと

 ラディリアス殿下だからこそ

 許される特権なのです。

 

 

 お二人はそれはとても仲がよろしくて

 幼い頃からよく一緒に過ごされ

 妹である わたくしが

 ヤキモチを妬くくらいでした。


 本当に、ずるいのですよ?

 わたくしの事なんて、いっつも そっちのけ。

 2人してわたくしのことを

 のけ者にするんですもの!

 

 大人となった今でもそれは変わらずで

 お兄さまなんて今や

 ラディリアスさまのお側に控える

 宰相のような位置づけを仰せつかり、

 恐縮されていたのを思い出します。

 

 そう言えばいつだったか、以前お兄さまが

 ラディリアスさまのことを『ラディ』と

 冗談めかして呼んだことがある……と

 仰っておられました。


 呼び捨てが良いのなら、『愛称』だって

 許されるはずだと思ったようです。

 

 けれどその時の殿下は

『その呼び方は、女みたいだからやめてくれ!』

 と、ひどく嫌がられたのだと言います。

 

 ……でもそれはきっと、言い訳ですわ。

 

 なんでも聞くところによりますと

 ラディリアスさまの愛称は ちゃんと別にあって

 ご生母であられるグラシエラ皇妃さまのみが

 それを使えるらしいのです。

 

 別にあるのなら

 教えて下さればいいのに……。


「……」

 わたくしはその話を聞いて

 当然の事ながら顔をしかめました。


 だって、幼なじみなのですよ?

 ラディリアスさまとお兄さまは

 名前を呼び捨てにするほどの間柄ですのに

 愛称を呼ぶことだけは許さないなんて

 何だか変な気がするのです。


 いいえ、呼ぶ……だけではありません。

 その愛称が何であるのか

 未だに教えては下さらないのです!

 

 お兄さまだけではありません!

 その愛称はけして誰にも教えない

 徹底ぶりなのだとか……。


 いったい全体、それはどういうことなのかしら?


 そもそも『愛称』って、

 親しくなった周りの人たちが

 自然に使うものなのだと、わたくしは思うのです。


 相手への敬愛の念が形となり現れる。

 ……それが愛称というものではないの?


 それなのに、それを誰にも言わず

 隠し通すなんて、どう考えてもおかしい。

 

 そして、その愛称が使えるのは

 ご生母さまのみとか!

 それって、絶対に有り得ないではないですか!


  わたくしはそのことがどうしても解せなくて

 思い出す度に憤慨(ふんがい)するのです。

 

 なぜ教えて下さらないのでしょう?

 

 親しい(・・・)などと思っていたのは

 わたくし達だけなのでしょうか?


 殿下との間に、見えない壁があるように感じ

 わたくしはとても悲しくなる。

 

 ラディリアスさまが教えて下さらないのなら

 臣下であるわたくし達はそれ以上、先へは進めない。

 親しくなりたいと思っていても

 それ以上の事は何も出来ないのです。

 

 皇族だからか何なのかは知りませんが

 時折ラディリアスさまは

 わたくし達に対し

 一歩引いたような そんな気配を感じるのです。


 それがわたくしには

 なんだかすごくもどかしくて!

 悲しくて、

 やり切れなくなる。

 

 誰かと親しくなりたいと思うのなら

『全てをさらけ出せ!』とまでは言いませんけれど

 それなりに心を砕く必要があると思うのです。

 

 次期皇帝になる方なので

 下々の人間は全て

 平等に扱わなくてはいけません。


 そういった意味で見れば

 真面目なラディリアスさまは事実上

 孤独なのかも知れませんが

 自ら率先して孤独を選ぶ必要もない。


 上に立つ立場の人間にだって

 心許せる親しい人は必要だと

 わたくしは思うのです。

 

 ただ、お母さまであられる

 グラシエラ皇妃さまとは

 良い関係を築けていらっしゃるのでしょうね。

 愛称を使うことを許されているくらいですから。

 

 ……でもそれってちょっと

 マザコン入ってません?

 

 わたくしは、心なしかムッとする。

「……」

 お父上であられる皇帝陛下も

 使えないのでしょうか? その愛称。


 少し不気味……いえ、不思議な感じも致しますが

 そう言われてしまえば

 さすがのお兄さまも愛称で呼ぶわけにもいかず

『もう、諦めた』と肩をすくませて

 いらっしゃいました。

 

 けれど、宰相ほどの位置づけを頂けたとなると

 仕事仲間(・・・・)としては

 認めて下さったのでしょう……。


 (へだ)たりを感じていた

 わたくしは、その時少しだけ

 ホッとしたのを覚えています。


 絆が切れたわけではなかったので……。

 

 

 ラディリアスさまは

 わたくし達と幼なじみではあるけれど

 そのご身分の為に わたくし達が考えも及ばない

 別次元の存在なのでしょう。

 それが成長する程に顕著になってくる。

 

 もちろん わたくし達も『侯爵家』として

 上位貴族にあたるのでしょうが

 皇族の方々と比べれば、その地位など

 その他大勢となんら変わることはないのです。

 

 そんな高貴な方々の興味を得ることが

 わたくしたち貴族の役割で

 それが出来なければ

 どんなに高位の貴族であっても

 取るに足らない存在になる。

 

 役に立たなければ、捨てられる。

 そして、捨てられても文句など言えないのです。

 

 それなのに、幼なじみという

 近すぎたラディリアスさまとの位置づけが

 わたくしには少し、苦しくもありました。

 

 わたくしがどんなに『お友だち』……などと

 思ってはいても、

 ラディリアスさまからしたら

 到底わたくしたちなど『友』として

 見ることが出来ないのでは……とも思うのです。

 

 以前はラディリアスも この わたくしに

 よく色んなお話をして下さいました。

 

 それなのに最近は……特に

 皇帝陛下より婚約の命令が下ってからは

 ほとんど会話らしい会話もなくなってしまいました。


 きっと『婚約者』としてのわたくしが

 よほど お嫌いだったのに違いありません。

 

「……」

 手のひらを返したようなそのお振る舞いが

 わたくしには少し辛くもありました。


 幼い頃は、本当に色んなことを話しましたのに……。


 沢山遊んで笑いあったのに。

 その思い出が、とても楽しくて幸せで

 なかった事にするには大きすぎて

 わたくしの心を掻き乱す。

 

 こんなにも簡単に崩れる友情だったなんて。

 それがとてもショックで

 未だに耐えられないのです。

 

 婚約破棄よりも何よりも、なによりも

 そのことだけが

 わたくしの心を傷つけている……というのが

 何ともおかしな話なのですけれど……ね。

 

 

    挿絵(By みてみん)

 

 

   ┈┈••✤••┈┈┈┈••✤ あとがき ✤••┈┈┈┈••✤••┈┈



     お読み頂きありがとうございますm(*_ _)m


        誤字大魔王ですので誤字報告、

        切実にお待ちしております。


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