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意識の違い。

 俺は異世界転生者として

 この世に生まれ変わった。

 

 けれどそんな事、最初(はな)っから

 気づいていたわけじゃない。

 何も分からず、普通に生まれて

 今の今まで、のほほんと生きてきた。


 物心ついた時には

 既に女として育てられていたし

 周りも自分もその事を疑うこともなかった。

 

 俺はまだ小さくて、何も分からなくて

 前世の記憶は当然全くなくて、

 自分は男なのになんでドレスなの?

 なんて思うわけもなくて、

 自分ですら なんの違和感もなく

 女の子として過ごしていたんだ。

 

 言われるままにドレスを着て、

 可愛いものをあてがわれ

 お(しと)やかに過ごすことを強要されても

 それがおかしいとは思わなかったし

 普通だと思ってた。

 

 その時の俺は、純粋に自分は『女』だと

 思い込んでいたのかも知れない。

 

 ……いや、『女』とか『男』とか

 そもそもそんな概念なんて

 持ち合わせていない。

 ただただ、ありのままを受け入れて、

 のほほんと過ごしていただけだ。

 

 双子の兄のフィデルと全く違う服を着て

 可愛い玩具(おもちゃ)を渡されたけれど

 それがおかしい事なのだとは

 全く思いもしなかった。

 

 ……まぁ、あまり物事にこだわらない

 そんな性格(たち)だったからね。

 ただ単に、気づけなかった

 だけなのかも知れないけれど。

「……」

 

 そんな性格も相まって、

 俺はこの現状に(あらが)(すべ)すら

 持ち合わせていなくて

 途中前世の記憶が(よみがえ)った後も

 漠然と『あぁ、そうなんだ?』

 ぐらいにしか思っていなかったんだ。


 正直性別なんて、気にもしていなかった。

 

 

 俺にとって性別なんて、どうでもいい事だったんだ。

 

 

 まぁ、あれだ。

 現代日本社会における常識(・・)




 ──性差がなくなりつつある社会──




 が、ほどほど身について、

 その常識(・・)異世界(ここ)でも通用するって

 無意識に思い込んでいた……ってヤツ、かな?

 

 そんな概念、

 異世界(ここ)で通用するわけなんて

 なかったのに、とんだお笑い草だよね……?

 

 だってさ、ここって異世界なんだよ?

 

 今まで住んでいたところとは

 国も時代も全く違うのに、

 そこに住む人間の常識も一緒だ! なんてこと

 あるわけなおんだよね。

 国や時代が変われば、それに伴って

 常識だって変化していくものなんだ。



 俺はただただ無意識下で、こっちも向こうと

『同じだ』……なんて思い込んでしまっていたから、

 このありさまだよね。

 呆れてものも言えないよね……。

 

 ……だけどさ、これはもう しょうがない。

 だって俺って、その時ガキんちょだったんだもん。

 

 大好きな両親に

『女の子として過ごしてくれ』って

 泣きつかれればさ、誰だって

『うん! いいよ』って普通に答えるだろ?

 

 俺にしてみればさ、前世も現世もどっちも

 俺が生まれた世界(・・・・・・・・)なんだ。

『同じ』だって思うのが当たり前だろ?

 

 ……疑う余地すらなかった。

 

 

 生まれ変わったこの世界でも

 男だろうが女だろうが、生活に

 そう変わりはないだろうって思ってた。

 ……ううん。違う(・・)なんて、

 これっぽっちも(・・・・・・・)思わなかったんだ。

 

 

 ……でも実際は、今世は前世と大きく違った。

 


 そりゃそうだよね?

 生まれ変わったこの時代は

 明らかに時間が後退してた。

 

 昔ってどんなだったんだろう?

 ……そんなの世界の歴史や日本の歴史を紐解けば

 簡単に答えは出たはずだ。

 身分制度があって、男女間の差があって、

 生きるのに必死で……って、そんな感じ?

 

 ここでもそれは例外ではなくって

 身分制度もそうだけど

 男女間の生活には

 かなりの(へだ)たりがあった。

 

 女系だった時代も確かにあったみたいなんだけど

 とにかくこの世界は、『子ども』が生まれにくい。

 

 そのせいで、1人の女性が

 その家の存続を担う……つまり、

 1人でその家の子どもを産む負担から解放し

 軽減させる措置が()られた。

 

 ……いや『解放』って言うと

 言葉が綺麗だけどさ、現実はね

 一夫多妻制。


 要は、数人の女性が

 その家の子どもを産むって方法が

 採用されたわけだ。

 

 要はお(めかけ)さんとか側室とか……?

 

 とにかく1人の男の人に何人もの

 奥さんがいるって言うアレ(・・)

 それが、主流だったの。

 

 ……別に、それをどうこう言うつもりはないよ?

 だって俺が生まれたのは侯爵家だったから

 女として育てられてはいるけれど

 その流れに(あらが)(すべ)なんて

 たくさんあったから。

 



 ……そう。問題はそこじゃない。


 

 それを取り巻く(・・・・・・・)社会情勢(・・・・)が問題なんだ!

 

 

 

 ……えっと、どういうことかって?

 

 だからさ、

 家に奥さんがたくさんいるっていう

 その状況を成り立たせる(・・・・・・)のには

 どうしたらいいかってことだ。

 

 だって、そう決められていたとしても

 女性にだって、思うところはあるだろ?


 浮気は嫌だとか

 自分だけを想っていて欲しいとか

 はたまた自分が家を継ぎたいだとかさ。

 

 だけどそう言う女性の『思うところ』ってのは

 ハッキリ言って邪魔(・・)なんだよね。

 だって考えてもみて? 一夫多妻だよ?

 

 この状況で女性が家督(かとく)を継ぐのって

 どう考えたって無理だろ?

 たくさんの夫に妻ひとり……なら分かるけど

 逆だからね?


 それを許しちゃうと

 下手すると赤の他人が自分の家を継ぐ……

 なんてことにもなり得ちゃうわけだから。

 

 だから、家を継げるのは『男子のみ』と

 自然に決まってしまうんだ。

 

 確かに女性は、大切にされてはいるよ?

 けどそれは、『囲い込む』大切さで

 自由のある生活だとは、

 とても言えたもんじゃない。

 

 女性は、

『危険だ』と思われるものから守られる。


 ……いや、正確にはしてはいけない(・・・・・・・)

 

 だから外には、ほとんど行かな……行けないし

 双子のフィデルみたいに

 武芸を習うことだって

 本来は許されなかった。


 習ったけどね、俺は。男だし……。


 

 学問だって、

 深く学ぶ必要はないとされていて

 下級貴族の令嬢にもなれば

 家庭教師がつくどころか

 学校にすら出してもらえない家なんて

 ゴロゴロいた。

 

 当然、学がなければ

 政治の表舞台なんて立るわけないし、

 それなりの職にもつけない。

 ただただ家庭に入り

 良き妻良き母となる事を求められる。

 

 ……ホントこれって哀れだよね?

 だって、その状況が間違ってるって

 気づけないだもん。

 そもそも教えてもらえないから。


 それが当たり前って、思い込んじゃうんだ。


 

 俺ってさ、昔の典型的な男女差別って

『なんで起こるんだろ? 』なんて思ってて

 それを深く知ろう……なんてことはしなかった。


 だけど自分がその立場に追いやられて初めて

 それはそういう事だったんだって気がついたんだ。

 

 自分の地位や、身分を

 自分の息子(・・)に伝えるために

 みんな必死だったのかも知れない。


 無理なく生活出来るために、

 裕福であるように。


 だから、貧しい人や弱い立場の人間には

 何も教えない。

 何も知らない事をいい事に、強者が

 幅を効かせる時代。


 それが、俺が生まれたこの世界だった。



 確かに、効率はいいかもだよ?

 それなりに頑張ってれば、食いっぱぐれない。

 

 だけどさ、その影でこうやって俺みたいのが

 泣く羽目になってるってこと、

 誰も気に病んだりとかしないんだ……。


 それはきっと、

 悲しいことなんじゃないかなって、

 俺は思うんだ……。


 

 挿絵(By みてみん)

   ┈┈••✤••┈┈┈┈••✤ あとがき ✤••┈┈┈┈••✤••┈┈



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        誤字大魔王ですので誤字報告、

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