動揺……せずには、いられません!
「お、お兄さま……これはどういう……」
不安に駆られて、
わたくしはお兄さまの方を向く。
できる限り小さな声で尋ねてみたのですが
しん……と静まり返ったこの場で
不覚にもわたくしの声は必要以上に
大きく響き渡ってしまいました。
「しっ! フィア……静かに」
お兄さまから注意され
わたくしはハッとし口を扇で覆う。
「……」
けれどこの状況……。
すでに手遅れ──でした。
必死に縮こまるわたくしの努力も虚しく
陛下はわたくしの存在に気づかれ
……いえ、とうにご存知だったのですが、
わたくしが不覚にも目立ってしまったがために
陛下は嬉しそうに目を細め、わたくしを
見たのでした……。
う……。
笑っておられる。
そのお顔、とっても怖いです。ラサロ皇帝陛下……。
「……」
陛下は……けれど、恐ろしい存在ではありません。
わたくしにとっては、むしろ
近所のおじさん? 的な存在なのです。
え? 最高権力者相手に『おじさん』は
失礼ですって? いいえ。そんな事はありません。
だって陛下は、幼なじみのラディリアスさまの
お父さまですもの。
面識は当然ありますし、
言葉を交わしたことなど、いくらでもあるのです。
それどころか、幼い頃はその膝に抱かれて
お菓子を頂いた事もあるのですよ?
……まぁ、今思うとすごく
恐ろしい状況ではあるのですけれど。
お菓子の下賜など、今や直接頂くことも
はばかれる程です。
……いや、シャレじゃなくて。
…………。
けれど陛下は本来、とてもお優しいですし、
本来はとても気さくなよい方なのです。
──そう、政治が絡まなければ。
「……」
「おや? フィリシア嬢もここにおられるのか?
……将来の我が娘、フィリシア嬢。
こちらへ──」
陛下に手を差し伸べられて、わたくしは戸惑う。
「あ、あの……」
と言うか、将来の我が娘とは
どう言うことなのでしょう……?
婚約はたった今、破棄されましたのに?
「……」
誰か、助けてくれるのでは……?と淡い期待を抱き
目を彷徨わせてはみましたが、
この国でラサロ皇帝陛下に逆らえるそんな
猛者など誰一人としているわけがないく、
わたくしは思わず唇を噛む。
「……」
それはお兄さまですら例外ではなく、
そっと息を吐き、『行くしかない』……と
小さくわたくしに呟くと、わたくしの手を取り
立たせてくれたのでした。
「お兄さま……」
その名を呼んでも、
無駄なことなのだと分かっています。
……分かってはいるけれど、呼ばずにはいられない。
きっと陛下にはお考えあっての事。
それが吉と出るか凶と出るか……。
「……」
それは『凶』かも知れない──。
だって陛下は、この婚約の発案者。
しかも先程『未来の娘』などと言われたのですよ?
けれどだからと言って、どうすることも出来ない。
わたくしは諦めもに似た、溜め息を軽く吐くと、
静かに陛下の前へと歩み出たのでした。
┈┈••✤••┈┈┈┈••✤ あとがき ✤••┈┈┈┈••✤••┈┈
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