約束が本当かどうか
そもそもヘルメースという存在は、人間はあまり好きではない。
当然彼女にも好き嫌い、相性の会う合わないがある。
今まであってきた人たちは、みんながみんな善意の塊だった。
4回目に話した人なら、あたしが知りたいことをただひたすらに
話してくれた。向こうから質問が来ることもない。
会話でその本人の素性がわかることはないが、ある程度は理解することが出来る。
正しいだけでは生きていくことはできない。時には嘘も必要だし、騙される事も
また成長に繋がる。だからこそ、歳相応の感じというか態度、仕草が必ずしもある。
だからこそ、あの二人から感じる態度は不気味さを感じた。
笑っているようで笑っていない。楽しそうでそうで楽しんでいない。
まるで接待されている気分なのが正直なとこだ。
それに不思議さは感じない。目上に対する対応、会話の仕方、相手を気持ちよく
させる喋り方、どれを取ってしても満点である。だからこそまるで20代前半には
見えなかった。
だからこそあの二人はやりにくく、会話が楽しかった。謎が多いからだ。
1つ失敗したのが最初にあった時のキャラだ。
話やすいように少し猫をかぶったら、あのキャラを維持し続けないといけなかった
ので、質問に答えざるを得なかった。
あいつらには、不気味でありながら目を見張る何かがある。
だからこそ少し見てみたくなった。だから彼女は、
(マーキングはさせてもらったし、今後に期待だね)
そして彼女はまた、泉の中に消えた。
・・・・・・・ ・・・・・・・ ・・・・・・・
今できることは、人がいると言っていたとこに
行き、誰でもいいから会話をすることだ。そのために道中でもできることをする。
「で、これを覚えろってか」
「くれただけでもまた助かってるんだ、文句は言えないな」
「まあいいさ、他にすることもないなら暇つぶしにはなる」
そういって、ジンは紙を見始めた。
何が書いてあるか、それはこの国の言葉である。
初めて会話した時は、言葉が通じたし、この国でも通じるのは知った。
だけど、文字に関しては別だった。何が書いてあるか全くと言っていいほど
わからなかった。暇つぶしにもなるし、読み書きは大切だ。
なので、覚える。いつだって勉強は生きていくために大切だ。
・・・・・・・ ・・・・・・・ ・・・・・・・
どれくらい歩いただろうか、あまり覚えていない。
時間はそんなに経っていないはずだ。時間帯がそろそろ夕暮れ時になってきた。
「そろそろ日が落ちるな」
「そうだ・・・・おい、なんか声が聞こえないか?」
そんなことを言われて、周りに耳を傾けた。
確かにする。だけどこれは、なんの音だ?
『カサカサカサ、カサカサカサ』
風を切る音だ。足音も聞こえる。
「おいおい、まさかモンスターか?」
「いや、それにしてはゆっくりだし、よく聞けば話し声もしないか」
「そしたら、あの光は夕焼けではなく、火かもしれない」
「おいおい、希望が見えてきたな」
初めて、人と会話ができる。厳密にいえば初めてではないが、あいつは人じゃない。
なのでノーカン。
嬉しさのあまり、全力で走った。
どうやって会話するのか、どうやって関係を築くか何も考えずただ走った。
そしてだんだん見えてきて足が止まった。
まず、見えてきたのは民家や町ではない。それは割とどーでもいい。
問題は人だ。人生で初めての盗賊だった。
何このありきたりなパターン。
などとは当然考えた。それよりも
((あの、年増女ぶっ殺してやる))
ヘルメースに対する怒りが勝っていた。