第二試験説明
俺が第二試験会場に着いた時には、約3時間の遅刻だった。辺り一帯が暗くなり始める時間帯に差し掛かろうとしていた。
着いた時には既に、誰一人として受験者の姿は無かった。いるのは、ごっついおっさん3人だけ。
もちろんそこに弁当なんて気の利いた支給品なんて物は存在しなかった。
目の前には、高さが10mはある壁で一帯を覆っている。まるで進撃の〇人みたいな壁だ。もしかして中にいるのは巨人か?なんて考えてしまう。
「遅かったな。遅刻に関しては特に罰則も無いから安心しろ。さて、これで今回の受験者が全員揃ったということで試験内容について説明しよう。見ての通り、他の物は一足先に説明を受け、中に入っている。それも遅刻した自分の責任だ。挽回して見せろ」
一人のおっさんが立ち上がり、俺に説明をし始めた。どうせここまで来たし、ちゃんと聞いておこう。
「さて、今回の試験は72時間耐久訓練だ。見ての通り、この壁の内側は冒険者訓練施設になっている。壁は円で覆われ、半径10㎞、直径で20㎞からなるサバイバル施設だ。この中には当然モンスター・魔物が生息している。そこに生息している魔物を退治すると、心臓付近にこのような結晶を取ることが出来る」
ポケットから小さな宝石?みたいな色をした石を取り出した。どうやらそれが結晶らしい。
「この中に生息している魔物には、食べ物として結晶の溶液を食わせている。溶液を食べれば食べる程大きな結晶が出来る。今回の試験ではこの結晶の数と大きさで勝負してもらう」
簡単に言えば、中にいる魔物でも、いつからいるかで討伐難易度が変わるってことか。この中に長く生きてるってことはそれだけ討伐が難しいって事を意味する。その為の大きさ勝負か。
ひねくれたこの試験だ。数には意味は無いだろ。頭の中で今回の試験説明を分析・解析してた中で最悪の一言を試験官が言いやがった。
「今回の試験は3名まで、パーティを組むことが可能だ」
「・・・・え」
終わった。この手の試験で一人は余程の自身が無いと無理だろ。てか俺には戦う力なんてないし。
「じゃあ、何ですか。今から仲間がいないこの俺は、こんな地獄の黙示録みたいな戦場に赴かなきゃいけないんですか」
「そうだ」
「死ぬかもしれない危険地帯に、裸一環で行かなきゃ行けないんですか」
「そうだ。文句を言うな。遅れたお前が悪い」
それはそう。だけど、ここで救済処置の一つくらい合ってもいいでしょ。あって欲しいでしょ。
「そうだ、これを渡しておこう」
そう言われ。受け取ったのは時計だった。安そうな時間しか書いていない時計だ。
「この時計には、GPS機能が搭載されていて、横のボタンが緊急アラートになっている。そのボタンを緊急時に押せば、最大20分以内に我々が救護に向かう。勿論、その暁にはいかなる理由であれ失格とする」
「それって、緊急時に更に20分生き残らなきゃいけないように聞こえるんですけど」
「そういったんだ。理解が早くて助かる」
それはもう・・・助けが来る前には俺は死んでいるじゃねえかな。深く考えるのはやめよう。俺に残された希望は果たしてあるのか。
状況を整理しよう。簡単に言えば魔物、モンスターを倒す。結晶を集める。基準に満たしていれば第二試験に合格できる。
なんだ、簡単じゃないか。こうやって一個一個整理していけばなんて簡単な試験なんだ。
ああ、モンスターの強さが一切わからない、仲間が組めない、三日間の野宿をやらなくてはならないなどの問題点を除けばな。
冒険者ってもっと簡単になれる物だと思っていたのに。どこぞの異世界みたいにギルドに行って、試験官をなぜかよくわからないチート能力でボコボコにして、そこそこのランクを手にする。
主人公の黄金ルートじゃねえか。そんな道が俺にも用意されていればどんなに良かったか。
現実はそんなに甘くない。筆記試験だってちゃんとしたし、これから実技が始まるし、最後は面接だし。どんだけなるのが難しいんだよ。
説明をしてくれた試験官が袋を投げてきた。
「おっとっと。これは・・・俺の荷物か」
中にはリボルバーなど、最初に預けた荷物がそのままある。使用禁止と判断されたものは無いらしい。
「そろそろ時間だ。急いで中に入れ」
「へいへい」
重い足を何とかあげ、入口に入ることにする。




