第一試験
ページをめくって最初に数学の問題から始まる。
『数学・一問目』
【ある駅から家までの距離は5km。太郎くんはこの道を行きは時速5kmで、帰りは時速10kmで歩きました。では、太郎くんが途中で立ち寄ったお店の名前は?】
??? なんだこの問題は?
ちょっと待ってくれ、意味が分からんぞ。立ち寄ったお店?そんなんいらねえよ。昨日までの過去問の問題はどこ行った、こんなん小学生の考えた絶対に解けない問題じゃねえか。
幸いなことはこれが四択問題だったことだ。今までやって来た準備はいったん全部忘れて、四択を見よう。
【1・プリン 2・紫陽花 3・気密性・保温性・防臭性に優れた自立式多層構造エコ素材使用の家庭用ごみ箱 4・コンパス】
1,2,4,番はまだわかる、なのに3番は何?これって結局ごちゃごちゃ書いてあるけど要はごみ箱って事だろ。
これは何番が正解なのか、ここは・・・3番でも選んでおくべきか、よし、そうしよう。もうこのテストは今までの常識なんて通用しないと割り切ろう。
マークシートの3番を黒く塗り潰す。正解していることを願って。
次だ次、
『数学・第二問』
【ある立方体の一辺の長さは3cmです。この立方体を半分に切って重ねたときの高さを求めなさい。】
【1・1cm 2・3cm 3・5cm 4・7cm】
これはまだ良心的な問題だな、立方体を半分に切って・・・変わらなくないか、元が同じで切って元に戻すだけなら高さは変わらないんじゃ。
ならここは【2番】を黒く塗ろう。
よし、次
『数学・第三問』
【あなたの年齢の2倍に3を足して、それを2で割り、最後に2を引いたら17になりました。さて、私は誰でしょう?】
【1・私 2・あなた 3・17 4・34】
また来たよ、この手の問題。いい加減にせえ。
これに関してはもう意味が分からん。取り合えず【1】。
もう受かったとか落ちたとかどうでもよくなっちまうよ。今まで結構気を張ってたし、それなりに準備して試験受けに来たのにこんな問題ばっかでやる気がなくなっちまう。
そんなこんなで地理、生物学も全くもって予習が生きない問題しかなかった。自分の解答が正解しているかしていないか一切わからない。
(ここまで数学、地理、生物って解いて来たけど、わっきり言って60点に届いているかわからない。選択問題をどうするか)
選択問題は、錬金術、トラップ工学、行動心理、オールジャンルから選べる。ここは安定の行動心理でもいい。
それか200点のオールジャンルか、ここは何を選ぶべきか。選択問題は封をされていて、自分の選択以外を開けることが出来ない。2つ封を開けてしまうと回答が無効になってしまう。
ここまで一切受かっている自身なんか無いし、もうオールジャンルで行くか。
ふざけた問題の数々、もう諦めも付くってもんよ。第二試験の準備を沢山していて、そこそこ筆記の準備って感じだが、もうおかしい。問題用紙が何者かによって入れ替えられていたととしか考えられない。
俺はオールジャンルの封を開いた。
『オールジャンル・第一問』
【0.999の値として正しいのは?】
【1・1より小さい 2・無限大 3・計算不能 4・1と等しい】
いきなり結構なマニアックな問題が出てきたな。確か数学的には0,999は極限で1に収束するから・・・
この回答は【4】。マークシートを塗る。
『オールジャンル・第二問』
【シャンプーの泡立ちにくさを感じる主な原因は?】
【1・温度 2・水の硬度 3・髪の毛の量 4・洗い方】
面白いな、さっきまでと違ってちゃんと問題として成り立ってはいる。泡立たないのは確か水にカルシウム・マグネシウムなどが多いから界面活性剤と反応して泡立ちにくくなるはず。だから回答は【2】になる。
よし次
『オールジャンル・第三問』
【「寝返り」の最も大きな役割は次のうちどれ?】
【1・体温の維持 2・血流の維持 3・睡眠の深さを保つ 4・呼吸を整える】
寝返りか、今まで余り考えたことは無いし知らない分野だな。4番はまずない。3番も関係がないな。ここだと1番か2番になる。寝返るってことは姿勢を変えるってことか。姿勢を変えることで体温は維持できないから消去方で【2】になる。
『オールジャンル・第四問』
【水の沸点を決定する一番強い分子間力はどれ?】
【1・ファンデルワールス力 2・静電気力 3・水素結合 4・双極子–双極子相互作用】
水は酸素と水素の極性が大きく、分子間に強い水素結合が生じることが、沸点を決定しているから、正解は【3】
この問題、だいぶマニアックすぎないか。冒険者で知っている人なんていないだろ。なんならこの問題を〇つけする人すら正解知らないだろ。
オールジャンルは全40問、残りの時間は見直しなどせずに解く。
試験官がの合図がなる。
「やめ」
その合図で教室にいた全員が机にシャーペンを置く。試験官がスピーディーに答案用紙、解答用紙を回収する。
「結果は1時間後にここで報告する。遅れないように」
そう言い残し、試験官は教室を出た。
俺は教室で特にすることが何もないのでクラリスがいる広場に向かう。
テストの結果には不満しかないが、終わってしまった物はしょうがない。それはそれとして受かっている気で、次の第二試験に備えよう。
そんな事を考えていると前方から一気に寒気が来た。
正体はわからない。なのに知っていいる。そんな気味が悪い感じだ。横を見るとジンが同じ寒気を感じたのかぶるっと震えている。
「気味が悪いな、前にもなかったか?」
「あったか?ここまでは無かったぞ」
気味の悪さは出入り口に着いた瞬間に理解する。
目を瞑り、仁王立ちのディーアがまるで強者感を出しながらいる。