必要な物を③ホームセンターでの買い物
武器は決まった。年式は古いがまだ使うことが出来るリボルバーが手に入った。
実際にこの武器を使うかどうかもまだわからないが、用心に越したことは無い。
となると、予算が残り3000円程しかないので、これを何に使うか。
武器以外なら防具か?はっきり言えばそもそも買えないだろうし、防具を身にまとって動けるほど俺は体力なんて無い。なら罠に使える物とかはどうだろう。縄とか穴を掘るためのスコップとかそういった物を買うのもありかもしれない。
てなると行くとこはホームセンターか?また行くのか。前回行った時はドアを買うことしか考えてなかったから品物を余り見る時間が無かった。いい機会かもしれない。もしかしたら時計みたいに安売りしている物が他にもあるかもしれない。
「向かうか」
そしてホームセンターに歩いて向かうことにした。
道中に店主が言っていたもう一つの武器屋の近くを通った。確かに見て分かるくらいに繁盛している。店の前に売っている見出しみたいな武器がお手頃価格で販売されている。そしていかにも武器って感じの見た目をしている。色んな色や形で取り合えず派手なのが見て分かる。
俺はどっちかというとシンプルの方が好きだから、先にこっちの店に来ていても何も買わなかった気がする。
「武器屋か、確かに店として考えるあらこっちの方が正しいのかもな」
武器や防具を商売にする以前に仕事だからな、売れなきゃ飯だって食うことが出来ない。売るための企業努力が結果として客に合った特注ではなく、工場による量産だっただけだ。それを命を預ける物の選択肢として選べるかどうかは買う側の自由なわけだ。
高くて手が出せない一級品を置いているってだけで店には入りにくいものだ。単に俺がそうだった。それよりも沢山客がいて値段もそこそこならそっちに足が向かうのは当然かもしれない。
まあ、俺はあの店主との約束があるからそれをいつか守るだけだ。たとえライバル店の武器屋がどれくらい繁盛していようとも関係ない。
そんな感じで武器屋についてなんか考えていたら、ホームセンターに着いた。
ドアが開いて中に入った。
「いらっしゃいませ~」
レジを担当しているおばあちゃんが挨拶してきた。挨拶といっても店に入れば誰にでも言っていることなので、こちらから言い返すこともない。実際「いらっしゃいませ」と言われてからの返し方なんてわからない。
そして真っ先に向かった先はキャンプ用品売り場に来た、話では第二試験は森とかサバイバル要素が必要なんてちらほら言われている感じがしたので、そういった用品に目を向けておくのも必要だろ。
品揃えに関してははっきり言ってよくわからない。俺が他と比べて見たことが無いから判別が出来ない。それでも、私見でいいならいい方だと思う。
もしここで3000円使うなら、何を買うべきだ?と疑問に思う。固定燃料とかを買うべきか、それとも一人用の寝袋か、選択肢は沢山ある。買えればの話になるが。実際に買えるとしたら、ランタンとか、非常食とかになるのか。
非常食と言っても、そのまま食べれるタイプやお湯を入れるタイプなど、様々な種類がある。今回の場合水自体も貴重な可能性すらあるから水を使うタイプはあまりお勧め出来ない。
結局色々と見たが、余り刺さらない。実際壊れたり奪われたりすることも考えると、バックなどの荷物を背負える奴をまずは買うべきか。バックを買うにも頑丈なのは値段が5000円以上するし、家にバックがあれば楽なんだが、
そんな事を色々と考えていたら突然声をかけられた。
「何かお探しですか?」
店員が隣にいた。ぬるっといた。この人は先日店長のとこまで案内してくれた人だった。ショートボブの女性だ。
「探しているっていうか、色々と迷っているというか・・・何かを買わないといけないけど、何を買っていいかわからないみたいな」
「ちょっと何言っているかわからない」
どこかのサンドイッチの人みたいなツッコミをしてくれていた。実際自分を上手く言葉に出来ていなかった気がする。
「店長から話は聞きました。店で出した依頼を受けてくださるということでありがとうございます。申し遅れましたね。私は笹原と申します。みんなからはさっさんと呼ばれていますのでそう呼んでください」
「笹原さん?どうも・・・」
「さっさんです」
なぜか圧がある。会うのは2回目ですよね?またどこかで合ったことあったりするのか。深く考えないようにしよう。
「今回はどのような御用で?出来る限り力になります。それが店員というものです」
「買い物の相談にのってくれるのはうれしいが、店員だからというよりも店が暇だからですよね」
そう、今日は平日で客自体殆どいない。床の掃除も品出しも終わって本当にやることが無いから話しかけてきた感じがプンプンしてきた。
まあ、結果的に相談には前向きに乗ってくれそうな感じはある。一人で考えても仕方がないし、ここは話半分でもいいから乗ってもらうか。
この目の前のさっさんに今の状況、依頼を受けるためには冒険者にならないといけないこと。そのための準備として、予算3000円で第二試験を突破したいことを伝えた。逆にそれ以外は何も言っていない。
「試験なめてませんか。流石に無理がありませんか」
ダメ出しを食らった。それはそう。俺が一番思っている
「試験がどのような内容なのかはわかりませんが、そもそも前提がまず間違っています」
「前提が?」
どういうことだ。俺がキャンプ用品に来たことが?それともホームセンターで買い物をすることが?何かが間違っているのか。
「ここに来たことではなく、考え方の話です。いいですか、冒険者はそもそも完成品を持参することは少ないです。基本的に食料、住処などは現地調達が基本になります。そこを経験で安全かどうかを判断するのが冒険者です。ですので完成された水や食べ物を持参することは少ないです。なので前提が間違っていると言ったのです」
言われて気が付いた。確かにそうだ。俺は今まで完成した商品を持参することしか考えてなかった。持参したものが奪われないように、使い切らないようにするにはどうすればいいかしか考えていなかった。
視野が狭くなっていた事に自分が情けなくなるな。だけど相談してよかった気がした。
「それを踏まえて、買う物を厳選していきましょう。まず必要になるのはナイフです。こちらがマチェットと言われるナイフになります。様々な用途に使える万能商品です」
「結構大きいナイフだな」
さっさんが持って来たナイフは大きい。木とかを切ることもできそうなナイフだ。ただ、高そうな商品にしか見えない。
「ちなみにいくらですか?」
「5600円です。買えませんねw」
煽ってきやがった。この店員。むかつく奴だな。
「冗談です。お店のためなのもありますし、このくらいならいくらか割引しますよ」
取り合えず、割引してくれるそうなので、こちらの商品を買うことにした。
そして、ここではもう買う物が無いのでさっさんに言われるがままに、他のレーンに行こうとした時に、俺と同じなのか買う商品を迷っている人が少し先にいる。