初めての会話
「きこえなかったか、ならばもう一度言おう。あなたが落としたのは金のカ0リーメイトか、銀のカ0リー・・・」
「いやいや、聞こえてるから」
ジンが即答だった。
何が起きていているのかよくわかっていない。
だけれど、初めて話ができる人?と遭遇した。泉の中から出てきた人を
果たして人と言っていいのかはわからない。
(なんだここは、イソップ寓話の中なのか)
そんなことを考えていたら、かまってほしいのかうじうじし始めた。
別に無言の空間はそんなに苦手ではないが、今は情報が欲しいし、何よりカ0リーメイト
が食べたいので、初対面の人に必ず言うセリフを言った。
「ヘルメースって名前はどうかと思うよ」
「なんであたしの名前を知っている、初対面なら名前を聞くべきではないか」
当たった。やっぱりこの展開はイソップ寓話の中の金の斧だ。
だけど疑問だ、確かその話なら男性の神のはずだ。なのに、
とても神には見えない女性だった。
そもそも神なのか?
「おい、今なにを考えた」
やっぱり神なのか?疑問が増えた。
見た目は、青髪ロングだ、ロングっていうか足より長い。
どんだけここにいたんだか、美容院くらい行けよと思った。
顔はどちらかというと綺麗で整っていた。これがスッピンなら良かったが、女性が化粧したらある程度顔が整うので、ある意味芸術だ。
「さっきの答えだが、俺たちが落としたのは金でも銀でもない普通の
カ0リーメイトだ」
「よろしい、正直なものにこの金と銀のカ0リーメイトを与えよう」
回答にジンが答えてしまった、しかも正直に
「おい、正直に答えちゃダメだろ」
「あ・・・」
ここで自分が何をしでかしたのか理解している。
「やっぱこれいらないので返してくれませんか」
「ダメだダメだ、そんなのあたしのプライドが許さなよ」
「そんなの聞いてねえよ、いいから返せ」
最悪だ、普通ならここで喜ぶ場面かもしれにが今は嘘でも言うべきだった。
ていうか、嘘でも真実でも落とした時点で帰ってこね~じゃねえか。
散々言ったが、返してくれることはなかった。
ただただ重い金と銀の塊を貰っただけだ。確かにありがたいことである。
200円で買ったものが何十倍にもなった。だけど、時と場合がある。
今回の場合は、最悪なだけだ。今必要なのは塊ではなく食べ物である。
そのことを向こうが理解してくれたからここの場所についての情報をくれた。
まず、人は存在する。それが何よりも大事なことだった。
一切人に会わなかったのは、ここが本来の道からだいぶ離れたところだからだそう。
そして、この森の名前だが、よくわからないらしい。名前はあるそうだが、
ヘルメースが人と会ったことがあるのは俺たちで五回目だそう。
なのでこの森の情報が大半になってしまった。
結果として、有益な情報は少なかった。だけど、今いるここの情報だけは有益だった。
こんな森にずっといるからか、町や国、流行に関してはこれっぽっちも知らないそうだ。
「それで、いったいあんたは何者なんだ」
「それは、もっと最初に聞くことじゃない」
別に突っ込んで欲しかったわけではなかったが突っ込んでくれた。
「あたしは精霊に近い存在、たぶんこのほうが納得しやすいと思う」
神という説はなくなった。ただ、精霊という存在は役割を与えられて生まれてくるので、その役割以外には
あまり興味がないとのこと。
「精霊がこの森にいるってことは、モンスターだったり魔物もいるのか?」
ジンがいい線の質問をした。
「この森にはいないはず。ここは森であって森でないから」
「「?」」
今ネタバラシをするのは好きじゃないは。それはおいおい知りなさい。
よくわからないプライドみたいな物があるのか。変な奴だな。
「いいことを教えてあげる。近いうちに魔王が復活するらしいわよ。多分、きっと、そうかもしれないって話ね」
「なんでそこまで保険をかける。かけるような話か?少なくとも俺はそんな話は信じないぞ」
復活するとはっきり言わずに、復活するかもと答えたのに疑問が生まれた。
そんな顔が出ていたのか、ヘルメースがとっさに根拠を言い始めた。
「あたしが聞いたのが前に来た人からだから、300年くらい前だからもう復活していてもおかしくない、うんきっとそんな簡単に死ぬ存在じゃないとは思うけど」
そんなに前の情報かよ。何一つ根拠がないし、その旅人?がソースかよ。
こいつの言っていることは、半分半分に留めておこうと思った。